京都の「不思議」に、新たなビジネスのヒントあり

京都の「不思議」に、新たなビジネスのヒントあり

企業や価値が継続するのはなぜ?

日本は、創業百年以上の会社が占める割合が世界一で、都道府県別の「長寿企業輩出率」を見ると「京都府」が第一位です。京都の老舗企業の多くは、大きな成長や一時的な利潤よりも、事業を次代に継承し、会社が安定的に存続することを重視します。また、近年は新しい商品が次々に登場し、モノのライフサイクルが短くなっています。発売当時は先進的であっても、技術の発展につれて価値は下落してしまいます。一方、京都には昔ながらの伝統を守りつつ、価値の下がらないモノやサービスが数多くあり、事業や価値を持続させる仕組みがあると考えられます。

「一見さん、お断り」の意図は?

京都の老舗の中には、新規客の「一見(いちげん)さん」が入店するには、常連客の紹介が必要という店があります。客側は紹介する側もされる側も、互いに相手に迷惑をかけないよう、緊張感を持って店とつきあおうとします。一方、店側は、信頼性の高い顧客の確保と獲得につなげるため、どちらの期待にも応えようと一層の努力をします。このように店と客が力量を擦り合わせ、互いに切磋琢磨することは、価値の維持・向上につながります。そして、長期的な信頼関係を構築することによって、効率的で安定的な経営にも結びつきます。一見さんの位置づけは、将来の顧客獲得のための布石であり、常連客との関係性を大切にしていることの表れとも言えるのです。

「京都ならでは」の魅力はどこから?

京都の店を訪れると、「このお茶は○百年前、○○の○○さんも飲んでいた」などと説明されることがあります。歴史や由緒を聞くと、その商品をより魅力的に感じるでしょう。京都では、商品のコンテンツ(中身)と共に、それを取り巻く背景や周辺情報といったコンテクスト(文脈)も大事に継承されており、それらがストーリーとなってほかには代え難い付加価値を生み出しているのです。グローバル化が進行する現在、「京都の仕組み」は新たなビジネスモデルのヒントとしても注目されています。

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先生情報 / 大学情報

京都大学 経営管理大学院  教授 原 良憲 先生

京都大学 経営管理大学院 教授 原 良憲 先生

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経営学

メッセージ

高校時代は理系のクラスに在籍し、大学では工学分野に進学しました。その後、コンピュータやソフトウェアの研究を経て、今は京都で日本の「おもてなし」から新たなビジネスモデルを探究する活動に取り組んでいます。ある意味では理系から文系的な分野への転換と言えますが、現在は文系も理系もない文理融合的な領域が非常に重要になってきています。高校生活では基礎をきっちり身につけると同時に、学部や学科にこだわらず幅広く好奇心を持って勉強することをお勧めします。

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京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。