ごみを見れば地域がわかる! 人とまちをつなぐ地理のチカラ

ごみは「その地域らしさ」を映す鏡
普段何気なく出されているごみには、「地域の個性」が表れていると言えるでしょう。人文地理学では、人の暮らしと地域・環境のつながりを研究します。この視点でごみを見てみると、都市と田舎、高齢者が多い地域と若者が多い地域では、出るごみの量や種類、リサイクルの進み方に地域差が見られます。ある地域はリサイクル率が80%以上なのに、別の地域ではほとんどリサイクルされていないこともあります。こうした違いを通して、それぞれの地域の暮らし方や社会の仕組みが見えてきます。
ある離島地域のごみ問題
島根県の隠岐(おき)という離島地域では、ごみ処理に大きな課題がありました。ごみ処理施設に直接ごみを持ち込むことが定常化しており、3Rの意識・行動が浸透していなかったため、一人あたりのごみの量がとても多く、その一方でリサイクル率は県内最下位という状況でした。最終処分場の受け入れ容量にも余裕がなく、ごみ問題の解決が急務でした。こうした状況を受けて、研究者が地域に入り、役場や住民と話し合いを重ねながら、ごみの出し方や分別方法を見直しました。新たなルールをを導入した結果、リサイクル率が上がり、ごみの量も減少しました。地域と向き合いながら課題を考えることで成果が出た一例です。
ごみから生まれる未来のヒント
最近注目されているのが、ごみをできるだけ出さずに資源を循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」です。これは環境にやさしいだけでなく、新たな経済的価値やビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。リサイクルやアップサイクルを活用した製品づくりで地域ブランドを育てる動きや、世界的な企業がごみを出さない製品設計に取り組む流れも進んでいます。廃棄物は「ただのごみ」ではなく、視点を変えれば社会に価値をもたらす存在です。人文地理学は、こうした動きを地域レベルから世界レベルまで幅広く見つめ、持続可能な未来づくりに貢献しています。
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関西学院大学教育学部 教育学科 教育科学コース 准教授波江 彰彦 先生
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