「読んだら燃やせ」!? そんな手紙や日記から歴史が見えてくる
複数の史料を組み合わせて読み解く
歴史学は、科学的な側面をもつ学問です。根拠がない事柄を語ることはできません。1人の人物について知りたい場合、公的記録や日記、手紙などの史料を読み解くことが必須です。また、1つの史料だけでは根拠として成立しません。本人が書いた史料の場合は自分に都合のいいことだけを書いている可能性もありますし、敵対している人物が書いた場合は悪意が混じっている可能性もあります。その史料はいつ、どのような立場の人が書いたものなのか、背景を考えながら多くの史料を読み込むことで、「史実(歴史上の事実)」にたどり着けるのです。
弟子にあてた手紙が後世に残る史料に
史料の中でも、手紙は歴史を読み解く上でとても重要なアイテムです。例えば、8代将軍徳川吉宗に仕えた室鳩巣(むろ きゅうそう)という儒学者は、幕府で見聞きした話を弟子に手紙で伝えていました。幕府の政務の統括者である老中の評価や、吉宗から相談された事柄など、当時としても重要な話を書いています。外に漏らすには少々不適切な内部情報が含まれているからか、時には「読んだら燃やすように」と書いてあるのですが、処分されずに多くは残ってしまいました。内容の一部は書き写されて、のちに「政治の参考書」として使われたようで、江戸から遠く離れた熊本でも見つかっています。本人も予想していなかったであろう形で残ったのです。
史料が現代の防災につながる?
歴史は単に昔のことを知るだけの学問ではありません。史料を集めて読み解くことで、防災に貢献できる可能性もあります。日本は、古くから地震や噴火などの災害が多く発生しています。例えば6代将軍徳川家宣、7代将軍家継に仕えた儒学者の新井白石は、約300年前に起った宝永大噴火の際の江戸の様子を、自叙伝『折たく柴の記』に書き残しています。個人の書いた史料であっても、火山学者や地震学者が分析すれば過去のデータとして蓄積できます。歴史を学び史料を読み解くことが出来れば、学問の垣根を超えて、現代にも役立てられるのです。
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