心臓病の患者を救いたい 心臓移植について
心臓が十分に働かない心不全
心臓は、血液を体中へ送り出すポンプの働きをしています。ところが心不全の状態になると、ポンプの機能が落ち、十分に血液が送り出せなくなります。心不全は、個別の病名ではなく、心臓の機能が弱くなることにともなう症状の数々、症候群を指します。心不全が起こる原因は、弁膜症や心筋梗塞などさまざまで、疲労感やむくみ、動悸(どうき)などの症状があります。心不全が重くなり、有効な治療方法が見つからない場合には、心臓移植という治療法が考えられます。
心臓移植の歴史
世界で初めて心臓移植に成功したのは1967年、南アフリカでバーナード医師の手によるものでした。それ以来、手術の精度・術後管理が向上し、すぐれた免疫抑制剤「サイクロスポリン」が開発されたことで移植後の成績が上がってきました。「国際心肺移植学会」の統計によると世界では年間5500~6000例の心臓移植が行われています。
日本では、1968年に心臓移植が行われましたが、その際にいろいろな問題が発生し、しばらく停滞する時期がありました。その後、1997年に臓器移植法が成立、1999年には大阪大学で、臓器移植法に基づく初めての心臓移植が行われ、日本における心臓移植の本格的な幕開けとなりました。
これからの心臓病治療を考える
心臓移植を受けるためには、日本循環器学会へ申請し、適応と認められる必要があります。その後、24時間にわたる強心剤の点滴や補助人工心臓の装着などの治療を受けながら、移植まで待機します。心臓移植については移植した後の拒絶反応、術後管理、ケアなど、多方面から研究が続けられています。
一方、心不全の人は年々増えており、移植を待つ人は900人を超えています。そのため、重度の心臓病の患者を救うためには、移植だけではなく、心臓の再生医療など、別の視点からの治療法も研究されています。重度の心不全の人が元気に長生きできるよう、さまざまな可能性を求めて、日々研究が進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 医学部 保健学科 看護学専攻 教授 上野 高義 先生
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