社会インフラのすべてを支える地盤を、「液状化」から守る
ガッチリ固いはずの地面が
新聞やテレビニュースで「液状化現象」という言葉を目にしたことはありませんか。普段は土の塊である地盤が、地震によって突然、液体状に変化する現象です。液状化が発生すると、地盤がぬかるんだ泥のような状態になるので、道路やさまざまな建築物、地中に埋設されているガス管や水道管などのインフラに甚大な被害が生じます。地震が多発する日本では、液状化発生リスクを早めに知り、防止策を講じることが非常に重要なのです。
砂の粒子が地下水に浮かんだような状態に
液状化は、どこででも発生するわけではありません。私たちの足元にある地盤は、石や土砂などが堆積してできたものですが、中でも砂粒子同士の結びつきが弱く、その隙間に地下水が浸透している場所で液状化が発生しやすくなります。そのような場所で地震が発生すると、揺れによって地下水の圧力が上昇し、粒子同士の結びつきがさらに弱まり、やがて粒子が地下水に浮いたような状態になるのです。このような地盤は「軟弱地盤」といい、昔は川が流れていた土地や、河口周辺や海沿いの埋立て地に多くあります。液状化が起るか調べる場合、地面から機械で直径10cm程度の穴を掘り進める「ボーリング調査」や、振動や電気の伝わり方を調べる「物理探査」を行い地盤の状態を把握します。
地盤と人々の暮らしを守るための研究
地盤調査の結果、液状化発生リスクが高いことが判明すれば、砂粒子の結びつきを強めるため、液状化する地層を締固めたり、セメントなどで固化したり、あるいは地下水を抜いたりするなどの液状化対策を行います。同じ地盤であっても、対策の目的などによって必要とされる手法が異なります。それぞれの場所に適した対策方法を選択することで、コストがかかり過ぎるのを防ぎ、適切な液状化対策効果が得られるようにします。より適切な調査法や効果的な液状化対策は「地盤工学」の中で研究されますが、地盤工学は、地盤の状態だけでなく、その上で営まれている人々の暮らしを安全に維持し守るための学問領域なのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡理工科大学 理工学部 土木工学科 教授 中澤 博志 先生
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