液状化を制御し社会生活を守る、土木工学の醍醐味
「液状化」の新しい現象
2011年3月の東日本大震災は、関東地方で広範囲にわたり「液状化現象」を引き起こしました。
液状化とは、地面が泥沼のようになる現象です。それにより多くの人命が奪われることはありませんでしたが、せっかく建てた家が傾いたり、水道・ガスなどのライフラインが使えなくなったりと、経済的・精神的な影響は決して小さくありません。
東日本大震災による液状化は、過去に起きたものとは2つの点で異なっています。1つは町全体・地域全体の広域で起こったこと、もう1つは震源地から遠く離れた場所で、震度も本来なら液状化現象が起こるほど大きくないのに起こったことです。
揺れ方や揺れの時間、余震の影響
液状化現象は、地面の砂の粒が揺れによって離れ、その隙間に水が入り込むことで起こります。多くは埋め立て地など人工的に造られた土地で起こりますが、河川の流域や、配管を通した高台などでも起こる可能性は否定できません。
特に巨大地震だけでなく、中規模地震でも揺れ方や揺れの時間、余震などによっては、これまで想定されていなかった場所・規模で液状化が起こる危険があると明らかになりました。現在、どのような揺れがどのくらい続いたときに、どれだけ液状化のリスクが高まるのかといった詳しい研究が進んでいます。
地面は生活の土台
液状化を防ぐには、技術的に地面をコンクリートや薬剤で固めればいいのですが、この方法では環境への負荷が大きく、コストも膨大で現実的ではありません。かといって、液状化の危険性があるのに何もしないわけにはいきません。住民や自治体が求める安全性の度合いと、コスト、環境への負荷とを調整しながら、実現可能な対策を提案していくことが、これからの研究と技術に求められています。
地面は生命、生活、社会の土台です。また、コンクリートや金属などの人工物と違って、地面はそれぞれの場所でまったく違う性質を持っています。この地面と対話をしながら研究を進めること、これが土木研究の難しさであり大きな魅力と言えるでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 土木・都市防災コース 教授 規矩 大義 先生
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