炭酸化処理をうまく活用して、環境に優しいごみ焼却を
ごみ焼却灰の炭酸化処理の意義
ごみの焼却は衛生面で重要ですが、同時に埋め立て地の寿命を延ばす手段でもあります。しかし、焼却灰からの有害な重金属溶出が周囲の環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、焼却時に発生する二酸化炭素を利用して、通常の高アルカリ性の焼却灰を弱アルカリ性に変える「炭酸化処理」が研究されています。具体的には、ガス状の二酸化炭素が灰中の酸化カルシウムと反応し、炭酸カルシウムに変化することで、二酸化炭素が灰に固定され、環境への放出が抑制されます。この技術は重金属の溶出を防ぐだけでなく、二酸化炭素の排出量を削減する可能性を秘めています。
炭酸化処理における温度と含水率のバランス
炭酸化処理は、ガスの温度や焼却灰の含水率によって反応速度や効果が変わります。水分が多すぎると炭酸ガスが通りにくくなり、温度が高すぎると焼却灰の水分が蒸発して反応効果が低下します。そのため、温度は50°C前後で、含水率が20~30%が現実的な数字でしょう。焼却灰による二酸化炭素の固定効果は、アミン溶液などの二酸化炭素吸収剤ほど高くはありませんが、低コストで手軽に実施できる利点があります。
リサイクルは地域特性とごみの種類により変わる
焼却灰のリサイクル手段として、最も実用的なのはセメントです。ごみ焼却灰はセメントの主成分に近く、大量に利用できます。また、原木のチップからの焼却灰は、ほとんど環境負荷を生じないため、土壌改良剤として植物や微生物の生育環境を改善するのに利用できます。しかし、炭酸化処理やほかのリサイクル手法は循環型社会のための手段であり目的ではありません。例えば、遠方のセメント工場への運搬は余分なコストや二酸化炭素の排出を招きます。これではリサイクルの利点が打ち消されてしまいます。したがって、既存のシステムと比べて、コストや環境負荷、エネルギー効率などをしっかりと評価しながら進める必要があります。
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先生情報 / 大学情報
公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 教授 金 相烈 先生
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