伝統医療を生かした「触れる」技術で患者に安らぎを
看護は「触れる」ことからはじまる
インドやチベット、中国などのアジアの国々では、今も医師が自分の五感を活用した伝統医療を行っています。西洋医学が根付く前の日本でも同じように医師の目と手による診察が重要視されていましたが、高度な医療機器が導入されるようになると、データを読み取ることに重きが置かれるようになりました。
しかし特に看護の分野では、手を使ったケアを見直す動きが生まれています。実際、ただ人の手で触れられるだけで患者は一種の心地よさを覚え、生きる力を取り戻すことから、「触れる」ことは看護の第一歩であり、看護そのものと言えるでしょう。
伝統医療に対する欧米の考え方
欧米では統合医療という考え方が浸透し始めており、伝統医療を診察や治療に組み込むことに積極的で、例えば心療内科系で用いられている「マインドフルネス」は、インドの瞑想(めいそう)にルーツを持つ治療法です。瞑想は科学的にもよく研究されており、副交感神経が優位になり、免疫力が高まることが明らかになっています。仮に科学的根拠がなくても、身体的にも費用的にも患者に負担がかからないなら活用しようというのが欧米のスタンスで、結果的にさまざまな伝統医療の臨床研究が進み、活用されています。対象者に優しく触れることで心身のバランスを整える「タッチング」などはその代表と言えるでしょう。
医療のハイブリッド化は世界的な流れ
日本人は西洋医学以外を排除する傾向がありますが、病気になる前段階では医療的効果を求め、伝統医療に親しんでいます。既に市民権を得ているヨガやアロマテラピー、また「アーユルヴェーダ」も伝統医療がルーツです。医療の現場においても、ヒーリングタッチなど新しいケアの講習を受ける看護師が増えています。
西洋医学を補う形で伝統医療を活用しようというのは世界的な流れですが、そうした場合、治療の選択肢も増えるため、患者側も一人ひとりが自分の体に責任を持ち、治療法を選び取っていく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
佛教大学 保健医療技術学部 看護学科 教授 中島 小乃美 先生
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