講義No.14491 看護学

「望む人が健やかに産み育てる」ために、支え合える社会へ

「望む人が健やかに産み育てる」ために、支え合える社会へ

今ここに生きている「ミラクル」

赤ちゃんの産声は、「自分の力で息を吸ってはくよ!」という宣言です。人間がここに存在しているということは、0.1ミリの受精卵が約280日かけて成長して生まれてくる間に、さまざまなハードルを乗り越えてきた証しだと言えます。その人間が、自らも命の誕生という「ミラクル」をやってのけたと気づくことは、自分や人を愛することの原点です。こうした、いのちの不思議を考える「思春期教育」は、母性看護学が担う役割の一つです。

人生設計と「性の健康」

母性看護学では、性に関する健康について考えます。晩婚化、少子化が進む日本社会では「プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)」の重要性が注目されています。その人がいつか妊娠や出産を望んだときに理想的なステージに立てるように、男女を問わず10代から始められることも少なくありません。例えば、人間関係のさまざまな場面で「同意とは何か」を考えたり、「性」の健康について自分の価値観をほかの人と話し合ったりすることはとても大切です。もっとオープンに語り合える雰囲気を世の中に広げていければ、一人一人がさまざまに思い描く人生を健やかに生きて、互いに支え合う社会をつくっていくことができます。

「ケア」でもあるインタビュー

「産み育てる」体を持つ女性が、変化するライフサイクルの中で周りの人々と協力しながら一生を健やかに順調に過ごすことが、母性看護学のめざすところです。研究では、女性やカップルを対象に実態調査を行います。例えば、不妊治療を受けて妊娠・出産した人のインタビュー調査では、女性が声にしづらい悩みがあること、地域や性別によって治療に対する考え方に差があることなどがわかってきました。個人の体験を聞きとることは、単に事例を集めるためだけではなく、語る人が心を整理して前に進めるように寄り添う「ケア」でもあります。看護師・助産師・不妊カウンセラーとしての視点や経験がここで生きるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 大谷 良子 先生

下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 大谷 良子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

母性看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

母性看護学は「女性向け」と思われるかもしれませんが、女性だけでなく男性にも関心を持ってもらいたい学問分野です。体と心のさまざまな性のあり方を認め合っていく次世代社会では、今後ますます人生のモデルが多様化します。だからこそ、母性看護を学ぶ男性の視点も広く社会に伝えることで、「母性」を女性一人が抱えるのではなく、みんなで支える社会に近づいていけるのではないでしょうか。女性も男性も一緒に、「人が生まれる」ことの神秘を味わうところから学んでいきましょう。

先生への質問

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「未来の、ひとつ先へ。自由で開かれた学びとともに。」
創立以来、本学は経済学部の単科大学として歩んできましたが、2024年4月にデータサイエンス学部を開設し、2025年4月には看護学部(仮称)を設置構想中で、3学部を有する総合大学に大きく生まれ変わろうとしています。多様な学問分野、人との出会い。総合大学としての強みを最大限生かしつつ、これからも社会課題の解決に貢献していきます。
自由で開かれた学びを通して5年後10年後のすぐそこにある未来を支え、「ひとつ先」の明るい未来を創造しましょう!