「望む人が健やかに産み育てる」ために、支え合える社会へ
今ここに生きている「ミラクル」
赤ちゃんの産声は、「自分の力で息を吸ってはくよ!」という宣言です。人間がここに存在しているということは、0.1ミリの受精卵が約280日かけて成長して生まれてくる間に、さまざまなハードルを乗り越えてきた証しだと言えます。その人間が、自らも命の誕生という「ミラクル」をやってのけたと気づくことは、自分や人を愛することの原点です。こうした、いのちの不思議を考える「思春期教育」は、母性看護学が担う役割の一つです。
人生設計と「性の健康」
母性看護学では、性に関する健康について考えます。晩婚化、少子化が進む日本社会では「プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)」の重要性が注目されています。その人がいつか妊娠や出産を望んだときに理想的なステージに立てるように、男女を問わず10代から始められることも少なくありません。例えば、人間関係のさまざまな場面で「同意とは何か」を考えたり、「性」の健康について自分の価値観をほかの人と話し合ったりすることはとても大切です。もっとオープンに語り合える雰囲気を世の中に広げていければ、一人一人がさまざまに思い描く人生を健やかに生きて、互いに支え合う社会をつくっていくことができます。
「ケア」でもあるインタビュー
「産み育てる」体を持つ女性が、変化するライフサイクルの中で周りの人々と協力しながら一生を健やかに順調に過ごすことが、母性看護学のめざすところです。研究では、女性やカップルを対象に実態調査を行います。例えば、不妊治療を受けて妊娠・出産した人のインタビュー調査では、女性が声にしづらい悩みがあること、地域や性別によって治療に対する考え方に差があることなどがわかってきました。個人の体験を聞きとることは、単に事例を集めるためだけではなく、語る人が心を整理して前に進めるように寄り添う「ケア」でもあります。看護師・助産師・不妊カウンセラーとしての視点や経験がここで生きるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
下関市立大学 看護学部 看護学科(2025年4月開設) 准教授 大谷 良子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
母性看護学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?