論より証拠 物証で過去を明らかに!
日本人の過去の営みを探る
考古学の研究対象は、遺跡から出土した遺物や遺構です。過去の人たちが残した物は、ほかに日記や記録などの紙類や、口伝え、いわゆる伝承という形で、受け継がれているものもあります。ところが紙の場合、燃えてしまえば研究できませんし、伝承も伝える人がいなくなれば終わりです。しかし考古学は、埋もれた物がそのまま証拠になります。特に土器や埴輪(はにわ)には流行のスタイルがあり、また作られた形などから、当時の有力者のことや、どことどのような交流があったかなどがわかります。
出てこないことが証拠
逆に、何も出ないことが証明になる場合もあります。古くから日本は神祇信仰であり、のちに仏教が伝わり、神と仏は別に祀られます。それが奈良時代になると、神と仏を一緒に祀る「神仏習合」という思想に至ります。実際に神社の境内に建てられた寺を「神宮寺」と呼びます。福井県内に古い事例が3件あります。そのうち2件は、都に先駆けて奈良時代初期に建てられたとの記録があり、福井県が神仏習合の発祥かもしれないと、発掘調査を行いました。すると鎮守の森には遺物がなく、長らく人の出入りがないことがわかり、その場所以外の境内からは西暦710年代の礎石、周辺からは瓦など、お寺の痕跡が発見されました。つまり、その場所は710年代以前から神社の境内(神域)で、そこにお寺を建てたことが判明しました。まさに、古代からここが神宮寺だったという証拠になりました。
物から、事実を明らかに
また、同じく越前出身で伝説とされていた僧「泰澄(たいちょう)」も、修行し亡くなったと伝わる地を調査したところ、平安時代前期に巨大な寺院のあったことが判明しました。今では、泰澄は実在したという説が有力になっています。出土した遺物や遺構は、後世の人の手で書き変えられることはありません。考古学は、ありのままを読み解き、事実をひもといていきます。知られていない日本の歴史は、まだ数多くあります。考古学は、それらを一つひとつ明らかにする学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
佛教大学 歴史学部 歴史文化学科 教授 堀 大介 先生
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