音楽で心の扉を開く「音楽療法」
即興的に音楽を創る音楽療法
音楽を聴くと心が動かされたり、癒やされたりすることがあります。音楽を使って治療をする音楽療法には、音楽を聴いて治療する方法と、治療を受ける人が音楽を奏でる方法があります。音楽を奏でるのに使うのは、たたけば鳴る太鼓や振れば鳴る鈴など、簡単に演奏できる楽器で、楽譜を使わずに自由に鳴らしてもらいます。訓練されたセラピストがそれに合わせて、即興的にピアノなどを演奏します。それによって、いかにも曲らしい、形式にのっとった音楽を創り出していくのです。障がいのある人や高齢者にとっては、この活動が自己表現につながるほか、言葉が不自由な人とのコミュニケーションのツールにもなります。
音楽療法は突破口のひとつ
それまでコミュニケーションの方法も見いだせず、どうしたらよいかわからない人に、音楽で心の扉を開いてあげられることもあります。また音楽療法により、言語的・身体的な機能が回復し、生活面に良い影響を及ぼすこともあります。何回かセッションを重ねていくにしたがって、少し難しいリズムを試したり、楽器を替えたり、ハーモニーをつけたりして、音楽のレベルや表現の幅を広げていきます。人間は誰でも、「もう少し難しいことをやりたい」、「もう少しうまくなりたい」という欲求を持っています。その欲求に応えるのも音楽療法の仕事です。
音楽は誰にでもできる自己表現
保育や教育の場では、既存の曲をミスなく上手に演奏することが良い音楽だという認識が一般的です。それを逸脱すると、音楽が不得意だと評価され、音楽に向き合う時、萎縮するようになってしまいます。しかし、本来音楽とは誰でも常に簡単にアクセスできるもので、自己表現の有効な手段のひとつです。歌えと言われて歌わされるのではなく、歌いたいから歌うのです。そのうちに、もっと上手に歌いたいと思い始めます。そういう自然な欲求をうまくすくい上げることが必要です。保育者や教育者だけでなく、音楽を扱うすべての人が、こういった音楽療法の考え方を知っていることが重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 教育学部 初等教育学科 初等教育コース 教授 田﨑 教子 先生
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