ネットいじめはなぜ「痛い」のか 学校臨床教育学の視点から探る
教師と児童・生徒との「距離感」の変化
教師には、教科内容を教えること以外に、児童・生徒が学校生活を順調に送れるよう指導するなどの大切な役割があります。近年、「学級崩壊」や「不登校」といった問題に直面し、「生徒の心がわからない」と悩む教師も少なくありません。教師と児童・生徒との「距離感」が昔とはずいぶん違ってきていることも、問題の背景にあるようです。子どもたちや学校をめぐる社会環境が大きく変化する現在、教師がその役割を果たしていくには、今の子どもたちの実態に沿った新たな知見が必要です。
複雑になる子どもたちの人間関係
近年の子どもたちの学力の変化とその要因を調査してみると、急激な成績低下が起こる原因として、子どもたち同士の「人間関係の軋轢(あつれき)」が見られます。大人が思う以上に子どもたちの人間関係は複雑化しているのです。従来の「いじめ」はクラスや部活動などの集団から特定の子を排除するのが主なパターンでしたが、今は、いつも一緒にいる集団の中にいじめの対象となる子を入れておくケースが多くみられます。一見、同じグループ内で仲良くやっているように見えても、ターゲットになった子は逃げ場がなくなるので事態は深刻です。
社会の動きが教育現場に与える影響を探る
今の子どもたちの大半は、学校でのリアルな人間関係のほかに、ネット上での人間関係にも気を配り生活しています。リアルでのちょっとした出来事がまたたく間にSNSで拡散されることもあります。そのためか、自分の表情を他人に読み取られないようにしようといつもマスクをして登校したり、昼食をひとりで食べている「ぼっち飯(めし)」を見られるのを恐れて、みんなから隠れて食べたりといった、以前にはなかった行動の数々がみられます。
このような大人には一見不可解な行動や、その背景にある意識と社会との関連を、実際に子どもたちを対象とした調査分析によって探り、教育の現場に役立つ知見を得ようとする学問が「学校臨床教育学」なのです。
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先生情報 / 大学情報
佛教大学 教育学部 教育学科 教授 原 清治 先生
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