多様なイメージング技術で脳のメカニズム解明に挑む!
さまざまなレベルで脳の機能を解析
脳はどんなコンピューターよりも素晴らしい情報処理装置です。しかしまだそのメカニズムはほとんどわかっていません。細胞の集合体である脳のメカニズムを理解するためには、細胞間や脳の領域間、脳・身体間の関わりについて知る必要があります。そこで、動物を対象に、脳の活動を可視化して調べるさまざまなイメージング技術を用いた研究が行われています。
脳の活動領域と細胞を測定
例えば、ある課題を実行するために脳のどこが活動しているかを知るには、「活動依存性マンガン造影MRI」という特殊なMRIを使います。一般的な機能的MRIでは、測定時に生じている活動の様子しかわかりません。一方、活動依存性マンガン造影MRIを使うと、あらかじめ投与しておいたマンガンが活動に応じて神経細胞に蓄積しているので、マンガンの濃度を測ることで脳のどこの領域が活動していたのかがわかります。
そして、脳の細胞がどのように活動しているかは、「内視鏡」で調べます。神経細胞が活動すると、細胞内のカルシウム濃度が上昇します。そこで、カルシウムと結合すると蛍光を発するタンパク質が作られるように遺伝子組換えしておき、細胞の活動を可視化し、観察します。現在、内視鏡の開発が進んでおり、その直径は約0.5mmです。
なぜ細胞の活動が変化するのかを測定
内視鏡を使うと数十から数百個の細胞を見ることができますが、それぞれの細胞の活動がなぜ変わったのかまではわかりません。そこでさらに細かく調べるために、「脳のスライス標本」により、細胞が生きた状態で顕微鏡で観察します。そうすることで、周りの領域からの影響を受けることなく、細胞の1個1個の活動がなぜ変化するのかを調べることができます。
今後の研究では、内視鏡の技術を確立して3つの方法をリンクさせ、脳全体から1個の細胞までを調べることで、脳の発現メカニズムの解明をめざそうとしています。脳の機能解明は、脳疾患の治療へもつながるものとして期待されます。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 小山内 実 先生
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