心理学の知見で認知症を予防し、「Well-being」な社会を

心理学の知見で認知症を予防し、「Well-being」な社会を

認知機能の衰えの個人差を考える心理学

「老いる」ことには、若い頃に比べ体力や知力が衰えるというマイナスイメージがあり、多くの人が「老いたくない」と考えています。もちろん、年をとれば認知機能は低下していきますが、同年齢の高齢者でも、認知機能の衰えには人によってずいぶん差があります。何がこの差を招くのでしょうか? 認知機能の低下をできるだけ遅らせて、長く心身ともに健康で生きるにはどうしたらいいのでしょうか? この問いに、心理学がヒントを与えてくれます。

脳神経の変化と認知の関係を探る「神経心理学」

心理学は社会のさまざまな分野で活用されている学問です。医療への心理学の応用といえばカウンセリング、つまり臨床心理学が思い浮かびますが、生活の改善や健康の増進にも心理学は大きく関係しています。
認知や加齢という、現代社会が抱える大きなテーマに関連する心理学のひとつが「神経心理学」で、医学と心理学の間に位置する学問です。神経心理学では、加齢や長年の生活習慣の影響で脳神経がどう変化し、認知機能にどんな影響を与えるかを科学的に調べます。

「健康心理学」で認知の低下を防ぐ生活を支援

神経心理学が、認知に関する生理的メカニズムの解明をめざす「脳を科学する」心理学ならば、そのメカニズムに基づき、認知の低下を防ぐ生活習慣や行動を促すためにはどうしたらよいかを考える「心の科学」が「健康心理学」です。認知症やその前段階とされる軽度認知障がいの予防には、脳の血流を促すための適度な運動とバランスの良い食生活が役立つことがわかっています。そこでそれを行動に移せない人たちが、自発的に健康的な生活習慣を身につけられるような「心の仕組み」を研究し、支援するのが健康心理学の大きな目的です。
密接な関係をもつ脳と心の双方からそれぞれの心理学でアプローチし、相乗効果を高めることで、多くの人が「Well-being(より良い状態)」で老いることができる社会をめざしているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都女子大学 心理共生学部 心理共生学科 教授 岩原 昭彦 先生

京都女子大学 心理共生学部 心理共生学科 教授 岩原 昭彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

神経心理学、健康心理学

メッセージ

超高齢社会がもたらす認知症患者の増加に立ち向かう策として、できるだけ長く心身ともに健康な状態を維持する「健康寿命」の延伸をめざす研究が、さまざまな分野で進んでいます。この国家的課題に心理学も大きく貢献できます。
脳科学的視点と心の仕組みの両面から心理学的アプローチを行うことで、「なぜ認知の低下が起こるのか」「認知の低下を防ぐ生活習慣に切り替えてもらうにはどうすればいいのか」をトータルに導き出せます。医学や保健、福祉などと融合して社会に貢献する心理学の最前線を、一緒に学びましょう。

先生への質問

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京都・東山の麓にキャンパスが広がる京都女子大学は、全国各地から学生が集まる全国型の女子総合大学です。
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