体内に入った毒をすばやく調べる方法を探る!
中毒症状を引き起こす、さまざまな薬物・毒物
私たちは、医薬品などの薬物や家庭用殺虫剤、農薬、植物や動物が持っている毒など、さまざまな化学物質に囲まれて生活しています。覚せい剤や大麻のような違法薬物、農薬、動物や植物が持つ毒は、体内に入ってしまうと中毒症状を起こし、摂取量によっては死に至る可能性があります。また、本来治療に使う医薬品に関しても、大量に服用した場合や、2種類以上の薬を服用する際の飲み合わせが悪い場合などには中毒症状を起こしてしまうことがあります。
求められる簡便な薬毒物の測定方法
中毒症状が見られる場合、正しい治療法の選択や、その後の経過予測のために、体内にある薬毒物の種類の特定と濃度の測定が必要です。覚せい剤や大麻、中毒を起こしやすい薬は、病院でも臨床検査技師が検査キットを使い種類を特定していますが、濃度を測定できる薬物はごく一部に限られています。また、キットで検出できない薬毒物の場合には、専門の機関でなければ分析できません。特に複数の薬毒物を分析するためには、多くの手間と時間がかかってしまいます。そこで、より早く、より簡単にさまざまな薬毒物を測定する方法、また複数の薬を同時に検出する方法が研究されています。
検出するのが難しい薬毒物も
薬毒物の分析には、液体や気体に含まれるさまざまな物質を分離する「液体クロマトグラフ」や「ガスクロマトグラフ」という装置と、物質の持つ質量をとらえることができる「質量分析計」という装置を組み合わせた分析装置を使います。この分析装置で、血液や尿の中から目的とする薬毒物を分離し、質量をもとにターゲットを絞って測定します。
しかし、分析が難しい毒薬物もあります。例えばキノコやフグなどが持つ毒の中には少量で死に至るものがあります。水に溶けやすい薬毒物には、体外に排出されやすいものもあります。これらの薬毒物は、血液中にはごく微量しか存在しておらず、検出することが難しいのです。こうした薬毒物を測定する方法についても、さらなる研究成果が期待されています。
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修文大学 医療科学部 臨床検査学科 講師 鈴木 隆佳 先生
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