幼児期は一生の食生活の基礎を作る大切な時期
食生活調査で子どもの健康を科学する
人間が一生に食べる食事の回数は約8万食ですが、健康な食生活を支える基礎は、幼児期に形成されます。小学生になる頃には食べものの好みや習慣がだいたい決まってくるのですが、何をどのくらい食べさせるのかは保護者次第というのが実情です。
そこで、幼児を育てている家庭を対象に、起床時刻や睡眠時間、調理時間、食事に関する困りごと、子育ての中での課題などについてアンケート調査が行われました。郵送して回収するのではなく、アンケートに協力を得られる園を探して説明に出向き、保護者会などで直接協力をお願いするというひと手間をかけることによって、保護者への意識づけの効果も期待したものです。
調査の結果、保護者の健気さが見えてきた!
200~300人規模での調査が17年間続けられ、さまざまなことがわかってきました。まず、朝食の調理時間については、準備に10分以上かける家庭とそれ以下の家庭では、明らかに10分以上の家庭の方が栄養バランスがとれています。バランスのよい食事のためには、時間のかかる加熱調理も必要です。また、朝食を食べない割合を調べると、子どもが数%なのに比べ、保護者は10~20%と差があります。朝の忙しい時間、子どもがぐずって食べてくれなかったり、着替えや準備に手間取ったりする中で「自分は食べなくても子どもには食べさせたい」という、保護者の健気な姿が見えてきます。17年前と比べると、外食や調理された食品を購入して家で食べる「中食」の増加傾向なども見えますが、子どもを優先する保護者が多いことは変わりません。
今後は「時間栄養学」を視野に
栄養学の世界では、「時間栄養学」という概念が注目され始めています。「何をどれだけ」に加えて「いつどのように」食べればよいのかという視点です。「〇〇を食べるのは寝る〇時間前までが望ましい」といった研究が広がっていけば、忙しい日の仕事帰りに、栄養バランスのよいお惣菜を選ぶなど、健康的な食生活をサポートすることにつながるでしょう。
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修文大学 健康栄養学部 管理栄養学科 准教授 田中 秀吉 先生
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