「夏は28度、冬は20度」は本当に快適? オフィスの快適性を探る

「夏は28度、冬は20度」は本当に快適? オフィスの快適性を探る

「快適」という感覚は数値で測ることができる

私たちは、少し寒いと感じると窓を閉めるなど、無意識のうちに「快適」になるように行動しながら生活しています。人が快適と感じる温度には地域差があり、また季節差もあります。もちろん、個人差もあります。実は、こういった快適さは、「熱的快適性」と呼ばれる指標によって測ることができます。熱的快適性は、人が居る場所の、温度、湿度、風速、太陽や照明からの放射熱の4つの要素および着衣量と代謝量の2つの要素をもとに求められます。具体的には機器による計測や、人々へのアンケートで測ります。

温度と人の行動との関係性

窓の開閉ができない都会のオフィスビルでは、いかに快適に働くことができる環境にするかが大きな課題となっています。そこで、11棟のオフィスビルで、熱的快適性の4要素を測る温度計、湿度計、風速計、グローブ温度計(放射熱を測る機器)を設置して年間を通じて計測を行っています。また、その建物内で働いている1350人の執務者にアンケート調査も行います。「人は室温が何度の時に少し暑いと思うのか」「少し暑いと感じる場合はどういう行動をとっているのか」など、4つの要素の数値と暑さや寒さの感じ方、行動の相関関係を見ていくのです。

熱的快適性を調べ、持続可能な社会の実現へ

環境省が推奨しているエアコンの温度「夏は28度、冬は20度」という数値は、実際のオフィスで本当に「快適温度」なのでしょうか? 調査によると、人の快適温度はオフィスでは平均して夏は26度、冬は23度という数値が出たのです。季節差はありますが、住宅では快適温度が18~28度と幅が広く、一方、オフィスでは23~26度と幅が狭いこともわかりました。
本来、人は自分で調整しやすい環境にいれば、エネルギーを使わなくても快適に過ごすことができます。都市環境の熱的快適性を調べ、その実情を明らかにすることは、環境負担や個人の健康負担を軽減させ、ひいては持続可能な社会の実現につながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都市大学 環境学部 環境創生学科 教授 リジャル ホム・バハドゥル 先生

東京都市大学 環境学部 環境創生学科 教授 リジャル ホム・バハドゥル 先生

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建築・都市環境科学

メッセージ

私の研究室の魅力は、現場調査が多いことです。オフィスビルなどさまざまな現場に出向いて計測を行い、実際に働いている人々にヒアリングする機会が多くあります。また、ネパールへの海外フィールドワーク研修では、現地の人にヒアリングを行ったり、現地の大学生と議論を重ねて、英語で発表したりします。さらに、調査結果を国際学会で発表することもあります。こういう経験は研究の道に進むにも、就職するにも大いに役立つと思います。あなたと一緒に現場調査できることを楽しみにしています!

先生への質問

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東京都市大学に関心を持ったあなたは

東京都市大学は2009年4月に武蔵工業大学からへ校名を変更。新たに文系2学部、理系2学部、文理複合系1学部を擁する総合大学として発足しました。前身の武蔵工業大学は80年の歴史を持ち多くの卒業生を輩出、日本の産業発展に貢献して来ました。97年には文系・理系複合の環境情報学部、09年には文系の都市生活学部と人間科学部を設立し、工学部から分かれた知識工学部を加えて学問の分野が大きく広がっています。80年の歴史を携え、キラリと光る特徴をもち存在感のある大学を目指す東京都市大学は、常に進化を続けています。