講義No.11026 法学

「休業補償がもらえない?」 暮らしと憲法について考える

「休業補償がもらえない?」 暮らしと憲法について考える

感染症対策「規制と補償はセット」なのか?

憲法と聞くと、国家や主権などの「大きな」話を想起する人が多いかもしれませんが、私たちの身近なものにも深く関わっています。
例えば、感染症の流行抑制のための措置の中には、営業の自由(憲法22条)と補償(29条)に関わるものが実はあります。感染症の流行が拡大した場合、国は各種の対策を打ち出します。その中には、法律に基づき飲食店や商業施設などに休業や営業時間の短縮を要請したり命令したりするものもあります。そして、公衆衛生上の必要性から国が規制を行った場合、それが必要最小限のものである限り、国がお店に対して補償をする必要がないと考えることが憲法学では実は一般的です。規制と補償はセットとして世の中では考えがちですが、憲法学的には、直ちにそう言えるかは難しい問題なのです。

補償してもらえないなら営業したい

お店の中には、要請は法的には従う義務がないはずだ、あるいは営業の自由が憲法上保障されており感染対策を万全にしていれば営業してよいはずだと考えるお店もあります。とはいえ、自粛の要請や命令があれば、「世間の目」や罰則を気にして大多数のお店がそれに従うでしょう。そうなれば、実際問題として「補償」が必要な事態が生じるでしょう。長い間営業しなければ経済的に困窮してしまう可能性が高く、それがなければ営業せざるを得なくなるからです。このような状況では、営業の自由とその規制、それと「補償」の関係を今一度考えなおす必要があるはずです。

新しい問題へ憲法学的にアプローチする

新しい事象が起き、さまざまな問題が発生しても、憲法の新しい条文がすぐ作られ、加えられるわけではありません。憲法上で想定していなかった問題は、これまで憲法学が適切と考えてきた解釈を再検討したり、あるいは検討の結果憲法だけでは充分に力の及ばないとすれば法律の仕組みを作ったり改めたりすることで、憲法の保障する人権や民主主義を守るという観点から、新しい問題に対処していく「不断の努力」が必要になります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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新潟大学 法学部 法学科 准教授 山本 真敬 先生

新潟大学 法学部 法学科 准教授 山本 真敬 先生

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憲法学

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メッセージ

憲法学は、人々の価値観が多様化し、異なる価値観を有する人々が共存する社会で、それぞれの個人の価値観に由来する考え・行為・要求が、憲法の保障する人権としてどこまで保障されるべきか否かを考える学問です。そのためには、自分とは違ういろいろな価値観、考え方を知っておくことも大切です。そこで、サークル、読書、アルバイト、ボランティアなど、さまざまな体験を通して、自分が当然と思っている価値観から離れ、多様な考え方に触れてみてください。そうすることで自分も豊かになり、また憲法を有意義に学ぶことができます。

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新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。