講義No.14168 看護学

住み慣れた家での生活に1対1で寄り添う看護

住み慣れた家での生活に1対1で寄り添う看護

求められる場は、病院だけじゃない

看護師の働く場と言えば、まず「病院」を思い浮かべるかもしれません。ただし、今は入院日数が限られているため、完治していない傷や不自由さを抱えながら退院して自宅で療養する人がたくさんいます。そのため看護師が家に出向いて患者にさまざまな援助をする「訪問看護」の必要性が高まっています。例えば病院では、整形外科や小児科など振り分けられた診療科目ごとに看護師が対応しますが、訪問看護の場では0歳から100歳を超える高齢者まで、どんな病気にも対応して、基本的には1人で援助を行います。そこでは看護に関する幅広い知識だけでなく、介護保険法や難病法など患者のサービスに関わるさまざまな法律の知識も必要とされています。

限られた時間の中で

訪問看護では、まず体温や血圧などの測定をして、病気やケガに応じた症状の観察をします。薬を飲み忘れがちな高齢者であれば、薬をケースに分けて入れるなどの服薬管理をしたり、必要に応じて入浴や食事の援助をしたりすることもあります。訪問時間は30分など限られている中で、患者や家族の不安な気持ちを言葉の奥から酌み取って解決することも大切な役割です。また在宅では、看護師だけでなく、介護やリハビリなどの専門職が関わることがあり、他職種との連携という意味でも高いコミュニケーション能力が求められます。

「生活を守る」ってどういうことだろう

病院では看護師が特定の患者だけに長く援助を行うことは難しいですが、訪問看護では基本的に1対1で、訪問中はその人のためだけの時間です。あくまで生活の場なので、病気などを治すことだけではなく、例えば「お花見に行くために、まず座れるようになろう」など、その人の楽しみのための目標を共有できます。生活習慣を見直す必要がある場合も「〇〇しなければ」ではなく「今できていること」から伝えるなど、前向きに行動を変えられるような声かけをすることが大切です。患者が暮らすその家で、生活は続いていくからです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 准教授 清水 佑子 先生

宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 准教授 清水 佑子 先生

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在宅看護学

メッセージ

看護師の仕事は、まず相手と話をすることから始まります。そのために今からでもいろいろな人と話をすることを心掛けましょう。話をするにしても、話し方や声のトーンを変えるなどさまざまな方法があって、相手の年齢や関係性によっても異なります。「こういう人にはこんな話し方がいい」といったことをいろいろな場面で感じてください。また、例えば友だちの髪形、表情や声のトーンなど「相手のちょっとした変化」に気づいて、さらに「いいね!」や「どうした?」など声をかける習慣をぜひ身につけてください。

宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。