生活騒音に困ったらどうする?
生活騒音ってなに?
日本では、これまで、工場を主な汚染源とする産業公害が公害問題の主流を占めてきましたが、最近では、一般家庭などを発生源とする生活公害が増加しています。生活公害の中でも、特に、身近で紛争の原因となりやすいのが、生活騒音をめぐる問題です。
生活騒音とは、一般家庭の日常生活にともなって発生する騒音であり、話し声や騒ぎ声といった人の行為によるもの、ピアノやテレビといった音響機器によるもの、冷暖房室外機や洗濯機といった家庭用設備機器によるものなど、その原因はさまざまです。
生活騒音は規制になじみにくい?
生活騒音を法律や条例で規制することについては、日常生活に制限を加えることになり、一律的な規制にはなじみにくいとされてきました。法律を例に挙げてみると、日本には、騒音を規制するための法律として、騒音規制法があります。しかし、騒音規制法は、工場騒音、建設作業騒音および自動車騒音をその対象としており、生活騒音をその対象とはしていません。
生活騒音を解決するためには?
生活騒音を法律や条例で規制することがむずかしいということになると、問題の解決は当事者の話し合いに委ねられることになります。しかし、当事者だけでは話し合いがこじれるのではないかという不安もあります。
そこで注目されるのが、行政機関による環境紛争処理です。環境紛争は、伝統的に裁判により処理されるのが一般ですが、最近では、裁判以外のさまざまな紛争処理方法が活用されています。これらをADR(代替的・裁判外紛争解決手続)と呼んでおり、環境紛争に係るADRの一つとして、行政機関による環境紛争処理があるのです。生活騒音については、環境紛争の行政処理機関の一つである都道府県公害審査会に調停の申請を行い、解決を図るのが有効です。調停では、調停委員会が当事者の話し合いを積極的にリードし、双方のゆずり合いに基づく合意によって紛争の解決を図ります。
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甲南大学 法学部 法学科 教授 岡森 識晃 先生
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