『アラビアン・ナイト』の物語世界から、アラブの奥深い文化に触れる
アラブの豊かで奥深い文化
アラビア語は国連の6つの公用語の1つであり、20数カ国で通用する主要言語です。日本でアラブやアラビア語、イスラムについて見聞きする機会は、紛争や宗教対立のニュースに偏りがちです。でも、アラビア語の言葉、詩の朗唱の美しさ、アラビア書道や美術など、アラブには豊かで奥深い文化や文学があります。何百年もの間、口承されてきた不思議な物語や、7世紀から知識層を中心に大切に受け継がれてきたアラブ古典詩がその一部です。特に、格調高い韻律の古典詩は、アラブの伝統的で崇高な精神世界を今に伝えています。
ファンタジーの源流『アラビアン・ナイト』
アラブ文学は複雑な経緯をたどって成立しています。例えば『アラビアン・ナイト(千一夜物語)』は9世紀以前にインドやペルシアからアラブに伝わったものです。アラブではあまり高く評価されていなかった『アラビアン・ナイト』が世界的に有名になったのは、18世紀にフランス語に翻訳されたことがきっかけです。アラジンのように魔法が出てくる物語が収録されているので「ファンタジーの源流」と位置づける研究者もいます。『ハリー・ポッター』などに代表される、現代の私たちが触れるファンタジーの世界には、さまざまな地域の文化がちりばめられているのです。
アラブ文学に新たな視点でアプローチ
『アラビアン・ナイト』には複数の版があり、その1つが北アフリカで伝承されてきた『百一夜物語』です。枠物語の中に18の物語が展開する構造は『千一夜物語』と同様ですが、「絶世の美男」と「不貞な女」のモチーフが複雑に絡み合っていて、ジェンダーの視点から「女嫌い(ミソジニー)」とも読めるなど、アラブ文学は新たな解釈の可能性がまだたくさんあります。文学を通して、遠いアラブにも、遠い昔から私たちと同じように生活している人たちがいることを知り、アラブの人たちが何を思い、何を大切にしてきたのかに目を向けることが、多様な文化を理解する第一歩となります。
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先生情報 / 大学情報
京都ノートルダム女子大学 国際言語文化学部 国際日本文化学科 教授 鷲見 朗子 先生
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先生への質問
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