さまざまなセクシュアリティ~HIV/AIDSの患者さんとの出会い
いまだに差別される病気「AIDS」
「HIV感染症/AIDS」を知っていますか? HIV(ヒト免疫不全)ウイルスの感染によって、免疫機能が下がり、肺炎などさまざまな病状を引き起こす病気です。血液・精液・膣(ちつ)分泌液・母乳などで感染し、死に至ることもあるので一時は非常に恐れられていました。しかし現在はウイルスを増殖させない治療薬があり、治療を続ければ感染するリスクはほぼありません。それにもかかわらず今も患者は差別されています。
HIV陽性の同性愛男性が抱える苦悩
HIV陽性で同性愛でもある方の悩みは多岐にわたります。まず病名が周囲に言いづらいことです。「自分はHIV/AIDS」と話すことは、同時に「自分は同性愛だ」とカミングアウトすることと同じになったり、「性的に奔放だ」と思われかねません。同性愛の仲間にも話しにくいかもしれません。また治療のためには仕事や学校を休んで通院しなければいけませんが、ウイルスを持っているだけで見た目は病気に見えないので、周囲に理解されにくい大変さもあります。同じような他人に言いにくい病気として、がんや精神疾患などがありますが、病気以外にセクシュアリティにかかわる偏見もあり、それらの患者よりもHIV陽性者はさらに孤独感や生きづらさを感じる状況にあります。
世の中は男女の性別しかないの?
社会では、同性愛の方がまるで存在しないかのように、異性愛を基盤としたさまざまな制度や仕組みができあがっています。しかし、セクシャリティの概念は、男と女の2種類だけではありません。生物学的(指定された性別)・性自認・性役割や性表現・性(恋愛)の対象など単純に分けて考えても24種類になります。もっと社会全体で、さまざまな性のあり方があることに気付いていきたいものです。心理カウンセリングの分野では、すぐに悩みを解決したり、こころを治療したりはしませんが、さまざまな性のあり方・生き方をされる人たちが少しでも生きやすくなれるよう、彼らの「自分探し」に寄り添っていきます。
参考資料
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京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 心理学科 講師 仲倉 高広 先生
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