古代から人々の心をとりこにしてきた「演劇」の魅力とは?

古代から人々の心をとりこにしてきた「演劇」の魅力とは?

「演劇」の臨場感がたまらない!

「演劇」の魅力は、なんといっても舞台と観客席が一体となった臨場感です。観客の反応が俳優の演技にも影響を与え、舞台上と観客席の相互作用が上演作品の面白さを深めていきます。時にはハプニングが起こることもありますし、同じ作品でも上演ごとに違いが見られるのも魅力の一つです。また舞台や観客席の作り方によって、俳優の声の響き方や観客が見た印象などに変化が現れます。このようにライブ感によって「一期一会の感動」が得られる演劇には、ほかの芸術作品とは違う独特の魅力があります。

古代ギリシア劇はオリンピックに匹敵する人気

もともと演劇の伝統は祭儀から始まり、歌、舞踊、演劇などに分化しました。ヨーロッパで演劇が形を成したのは紀元前5世紀頃の古代ギリシアです。古代ギリシア劇の上演は、オリンピックに匹敵する一大イベントで、全市民がすり鉢状の劇場に集いました。舞台では頭巾のような仮面をかぶり、華やかな衣装をまとって演技を行いました。
古代ギリシアの哲学者・アリストテレスは著作『詩学』の中で、劇形式こそが最高の文学形式だと述べています。人間の声と結びついて作り出される演劇が、当時の文学の形として最重要視されていたのでしょう。

知的な刺激が心を揺さぶる

その後、古代ローマ、中世、ルネサンス、近代を通じて、演劇の伝統は新しいスタイルを生み出しながら脈々と受け継がれてきました。シェイクスピアの名前はあなたも知っているでしょう。演劇はそうやって、それまでの演劇様式を打破し新しい舞台表現の可能性を追求してきたのです。
むずかしいと思われがちな前衛劇もそうした追求の一つです。前衛劇の特徴は、知的刺激に満ちた舞台を見て、それは何を表現しようとしているのか、観劇後も頭の中で反すうして考え続けるところにあります。
演劇から受けた感動はずっと心に残り、その後の生き方に影響を与えることもあります。演劇とは、実際に観劇して体感しなければわからない刺激に満ちた芸術活動なのです。

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東京都立大学 人文社会学部 人文学科 教授 三宅 昭良 先生

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表象文化論、舞台芸術論

メッセージ

「人文学」は人間の豊かさを知る学問です。
人文学がなければ殺伐とした、心の貧しい社会になることでしょう。短期的に成果の上がることに目が向きがちな現代だからこそ、改めて人文学が社会に果たす役割を多くの若者に知ってもらいたいと思います。十分にまだ理解できないけれど、「すごいものを見た」という経験は一生、残ります。若い頃は純真に感動できる時期です。大学ではみずみずしい感性を刺激して、心を豊かにする経験を重ねてください。

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