学校で学ぶ美術だけが美術じゃない! 美術教育のこれからを考える
美術教育の固定イメージ
学校現場では、美術はしばしば「副教科」と呼ばれます。確かに、多くの高校生にとって美術は受験と直結しないこともあり、授業時間も年々減り続けてきました。この背景には、美術や図画工作を「絵を上手に描くための教科」と考える誤った認識を指摘することができます。この固定イメージをどうやって解きほぐすのかが、美術教育を研究する重要な課題の一つです。
美術教育の現代的な役割とは?
今日の美術教育は、学校の中だけにとどまらず、美術館などで行われるワークショップや地域で展開されるアートプロジェクトなど、社会のさまざまな場面で展開されています。このように、地域に根差した美術教育(Community-Based Art Education)は、国際的にも研究が進められてきました。
近年では、美術や芸術を基盤にした新たな「学びの場」にも注目が集まっています。それに伴い、作品を静かに鑑賞する場所としての美術館だけではなく、異なる立場にある人々が出会い、交流し、対話する拠点としての文化施設も模索されてきました。これからの時代を切り開く「学び」をつくりあげていくことも、美術教育の重要な役割です。
その現場も、歴史的な建造物や図書館、団地や商店街などさまざまです。芸術や美術を媒介にすることでゆるやかに社会をつないでいくプロセスに、この分野のダイナミズムがあります。
芸術による研究と領域の拡張
最新の動向として、研究の方法として芸術を用いる「アートベース・リサーチ」にスポットが当てられています。これは、再現性を重視する「サイエンスベース・リサーチ」とは異なり、芸術に特有の予測できない動きの中で「あり得るかもしれない社会」を実践していく研究方法であり、社会学や教育学でも取り入れられています。研究そのものに創造性を取り入れるという意味において、今後の展開が期待されています。あなた自身の興味のある領域をいかに芸術と結びつけるか、研究手法を開発することそのものが既にアートの入り口となっているわけです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 共同教育学部 美術教育講座 准教授 市川 寛也 先生
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