人間性や、人とのつながりを育む美術教育

人間性や、人とのつながりを育む美術教育

アートには現代の課題を解決する力がある

アートやデザインは身の回りにあふれています。ファッションやインテリア、生活用品のデザインでは、必ず造形に関わるので、色や形などを組み合わせたり、考えたりしながら判断力や思考力が養われます。そして美術は本来、自己表現はもちろん、コミュニケーションツールになり得るものです。
ところで、現在の日本をみると人間関係が希薄になって孤独を感じる人が多い社会となっています。こうした社会のあり方を変える可能性を秘めているのが、学校の美術教育です。そのためには、どのような授業が望ましいのでしょうか?

アートがコミュニケーションツールとなる

人類がアートを獲得したのは、約5万年前までさかのぼります。当時は、土器に模様をつけるなどして仲間意識を高める、コミュニケーションのツールでした。多様な歴史をたどりますが、表現者と受け手がいてコミュニケーションが成り立つという構造は変わりません。
もっとも、今の学校教育のように同じ題材で同じように描くことの多い表現空間では、自由な表現もコミュニケーションも成り立ちません。ところが、子どもたちに動物園で見たゾウを自由に描かせると、ある子は「さみしくて泣いていた」と水色のゾウを描き、ある子は「家族と一緒がいいから」とゾウの家族を描いたりします。自分で考えて自由に表現するから、他者の作品にも興味がわき、またそれを認め合うことができるのです。

地域を育て、人と人とをつなぐ役割も

中学生の授業では地域に出て、見たものや地域の人の話を聞いて作品にするとよいでしょう。地域のコミュニティやイベントで作品を展示したり、ワークショップをしたりすることで、地域との交流が広がり、地元愛に結びつきます。
このように学校の美術教育を変えるだけでも、人間性を養い、人と人をつなげる役割を果たすことができます。アートには、社会が抱える課題を改善に向け、地域の活性化につなげる力もあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛知県立大学 教育福祉学部 教育発達学科 准教授 藤原 智也 先生

愛知県立大学 教育福祉学部 教育発達学科 准教授 藤原 智也 先生

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美術教育学、教育発達学、教育福祉学

メッセージ

あなたには、今のうちからぜひやってほしいことが3つあります。
まずは常識を疑うこと。親や先生に言われたことを、本当にそうなのか、違う方法はないかなど、自分で考えてみることです。2つめは、自分の目で確かめること。人が言っていることやネットの情報の真偽はわからないものです。実際に確かめてみることが大切です。最後に、仲間をつくること。クラスや学校のような同質性の高い集団だけではなく、学校外も含め顔が見える範囲で多様な人間関係を手にしておくことです。この3つのことが、生きていく力となってくれるでしょう。

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