仏師運慶の力強い作風はどうやって生まれたのか?
運慶の力強い作風が生まれた背景は?
運慶は、鎌倉時代の仏像制作を行う職人・仏師の中で、天才と言われることがあります。運慶と言えば、東大寺南大門の金剛力士像などの力強い仏像を思い浮かべる人が多いでしょう。実際に、細身の身体で穏やかな表情の平安時代後期の仏像と比べ、運慶の作品には力強さやリアリティがあることが大きな特徴です。こうした運慶の個性的な作風はどのようにして生まれたのでしょうか? それを知るためには、運慶の作品や生涯における作風の変遷、どのような仏師や仏像から影響を受けているかなどについて調査する必要があります。
仏像の観察・分析や史料の解読によって調査
具体的な調査としては、運慶の作品を所蔵している寺院などで、実際に作品をさまざまな角度から観察し、その特徴を調べます。また、仏像内部に書かれている文字を調べたり、仏像がどのような経緯や作業体制でつくられたかなどの情報を史料から読み解いたりします。さらに運慶が彫刻の技術を学んだ父・康慶の作品や、影響を受けたと思われる同時代以前の仏像と運慶の作品とを比較します。こうした調査を通して、運慶の作風が生まれた経緯や父・康慶との造形表現の共通点・相違点が少しずつわかってきました。
運慶の仏像の独自性はどこにあるのか?
わかってきたことの1つは、運慶の作品は一見オリジナリティが高いように思われますが、父・康慶や古い時代の作品から受け継いだ要素もあるということです。例えば、衣服の着け方やしわを刻む方向などは、父・康慶や快慶など同じ流派の仏師で共通したものを使います。一方で、リアルな肉づきの表現や立体表現などに、運慶自身のこだわりやオリジナリティが見られます。
現代のアーティストとは異なり、古い時代の仏師たちは、お経に決められた仏像の姿形や注文主の意向など、さまざまな制約の中で作品をつくっていました。運慶もその例外ではありませんが、運慶はさまざまな伝統を吸収しながら、うまく自分の個性を発揮していると言えます。
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弘前大学 人文社会科学部 文化創生課程 文化資源学コース 助教 佐々木 あすか 先生
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