観光客も地元住民も、ともに満足できる「観光地開発」のあり方とは
「行きたい」と感じさせるための観光戦略
美しい海を背景に、若者たちがビーチアクティビティを楽しんでいる写真や動画を若者が見たら、「自分も行きたい、やってみたい」と感じるでしょう。では、同じ映像を、「景色を眺めながらのんびり過ごしたい」と思っている中高年世代に見せたら、どう感じるでしょうか。多くの人を観光地に集めるためには、「ターゲット(集めたい客層)」のニーズに合わせて「見せ方」を工夫しなければなりません。ターゲットごとのニーズを考え、より効果的な誘致戦略を練ったり、新しい魅力を発見・発信したりする活動を「観光マーケティング」と呼びます。
人を集めるだけでは「観光」は成り立たない
景色が美しい場所、興味深い体験ができる地域などを観光地として開発する最大の目的は、その地域の経済振興や文化の活性化です。観光客の数を増やし過ぎることで、交通渋滞や騒音、混雑やマナー違反など、地元住民の日常生活に支障をきたすような「オーバーツーリズム」が発生しては、観光客も楽しくないでしょうし、そもそも観光開発の意味がありません。地元の人々の要望にも十分に配慮し、それをすり合わせた方法を模索・提言することも、観光マーケティングの重要な役割です。
観光客数を上手にコントロールする観光戦略
ハワイのオアフ島に、「ハナウマベイ」という人気観光地があります。ここでは観光客がビーチに入場する前、環境保全に関する教育ビデオを見てもらい、さらに入場料を徴収することで、間接的な制限となり、オーバーツーリズムが発生しない仕組みを作っています。観光客が増えすぎたために、海の環境が悪化した過去の反省をもとに、地域ぐるみで対策を練ったのです。
日本はこうした観光政策があまり進んでいないため、観光開発による環境悪化が各地で発生しています。「観光学」をベースにした観光マーケティングや、目的の場所・施設を特定した「デスティネーションマーケティング」を発展させ、観光客も地元の人々も、ともに満足できるような観光開発を進める必要があります。
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先生情報 / 大学情報
名桜大学 国際学部 国際観光産業学科 上級准教授 伊良皆 啓 先生
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観光学、観光マーケティング論先生が目指すSDGs
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