「近く」へ観光に行こう! ~都市周辺の「田舎」に注目~
都市近郊の自然を楽しむ
旅行や観光というと遠くに出かけて名所を見たり、名物を食べたりするイメージがあります。しかし最近では自然の豊かな都市近郊への旅も注目されています。発端はヨーロッパです。1980年代にフランスで長期のバカンスを取ることが法律で義務づけられました。お金持ちであれば、外国の避暑地やリゾート地に行って贅沢に過ごすのですが、経済的に余裕のない人びとはそうはいきません。そのような人びとを中心に、身近で自然が豊かな農村に滞在し、癒やしの時間を過ごす余暇としての「グリーンツーリズム」がブームになりました。
東京周辺にも癒やしの場所はある!
東京というと、ビル群や満員電車のイメージが強いかもしれませんが、実は周辺にはまだ自然の多い地域が残っています。例えば高尾山や埼玉県の狭山丘陵にある「トトロの森」と呼ばれる地域には豊かな緑があり、野生動物も多く生息しています。また山の麓の湧水地には家々や集落が立地し、その風景は「背山臨水」という風水の理想的な構図で人びとに安らぎを与えるものになっています。私たちは都心から1時間程度でこのような環境に移動できるため、都会的な生活と田舎暮らしの両方を手軽に楽しむことができます。都市周辺の「ルーラリティ(農村らしさ)」に注目すれば、ライフスタイルが魅力的で豊かなものになります。
安くておいしくて安全な「直売ツーリズム」
ルーラリティを楽しむうえで注目したいのが農産物の直売所です。地元の農家が作ったおいしい野菜が新鮮な状態で買える直売所は、東京周辺の地域でも数多く見られます。直売所に買い物に行くこともツーリズムの一種で、農家はもちろんのこと交通機関などにもお金が落ちます。農家の人たちも自分たちの地元で生産者の顔が見える形で売るわけですから、安全性にも気を使います。旅行者にとっては、農家の人たちとコミュニケーションしながら買うことで、おすすめの野菜や調理法なども教えてもらうこともできます。そして、人と人との交流が生まれ、豊かな時間を過ごすことができます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 菊地 俊夫 先生
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