「健康×観光」という新しい分野で人々の健康や経済に貢献する
「病院」と「旅」はもともと同じものだった?!
「病院」を表す「ホスピタル」と「おもてなし」を表す「ホスピタリティ」は、ラテン語の「hospes(客人の保護者)」に由来しています。旅と病院(医療)は深い関わりを持っていたともいえましょう。欧州等には「健康保養地」という概念があり、観光地で休養・保養することが一般的です。国によっては、医療保険を活用して療養滞在できる仕組みもあります。このような旅(観光)を「ヘルスツーリズム」と呼びます。
厚生労働省もヘルスツーリズムを後押し
厚生労働省が「宿泊型新保健指導プログラム」と称して、宿泊施設等での健康プログラム(保健指導)政策を2018年に発表しました。観光や地域活性化の文脈で政策になることは想定内でしたが、同省が求める成果は「国民の健康」です。旅が健康増進・維持・回復・疾病予防に寄与するというヘルスツーリズムに具体的に着手した例になりました。一方、普及が進むリモートワークで通勤ストレスが軽減されたように考える人も多いですが、リモートワークで1日の歩数が約3割減ったというデータもあります。また、通勤時にたくさん歩くことで会社到着時のストレス低減や認知機能テストの結果が向上した研究例もあります。今後、こうした政策や知見が観光に応用されるでしょう。
旅は人の自己肯定感を高め心身を健康にする?!
旅をすると怒りや疲労感、緊張が解け、非日常に触れて気持ちが高揚したり、「自分にもできそうな気がする」という自己効力感が高まるという研究成果もあります。この自己効力感の高まりは健康増進をしていくための基本にあり、旅先で健康増進を図るということの妥当性につながります。このように、旅(観光)には、ライフスタイルを改善する可能性を生み出す力があるのかもしれません。その結果、研究や取組みが持続可能な開発目標(SDGs)における「すべての人に健康と福祉を」、「働きがいも経済成長も」、「住み続けられるまちづくり」に貢献するような動きになっていくとみています。
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先生情報 / 大学情報
芸術文化観光専門職大学 芸術文化・観光学部 芸術文化・観光学科 准教授 髙橋 伸佳 先生
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