沖縄の環境変化をデータで読み解く 過去から現在、未来へ
沖縄にあるデータ
自然環境の変化を理解するためには、過去と現在の生物の変遷を知ることが有効です。しかし、50年以上前になると、現在ほど環境問題が重視されていなかったため、食用以外の生物のデータはほとんど作られていません。ただし、沖縄については非常に貴重な例外です。
何が起きたのか
沖縄は、戦後の米軍統治から1972年に復帰しました。その際、本土並みの開発が進むことへの懸念から、海岸の環境に関する調査が精力的に行われました。この調査データと合わせて、農林水産省の農業生産高や漁獲量などの統計を活用することで、沖縄の自然環境の変化を分析できます。例えば、河口の干潟の石の裏に生息する貝の一種は、1960年以降に個体数が著しく減少しています。当時、沖縄ではパイナップル農家が増えて、畑が大きく広がっていきました。農業生産高を見ると、パイナップルの生産の増加が確認できます。一方で、畑の開墾により山の赤土が川に流れ出し、河口の干潟に堆積し始めます。それまでの干潟の砂に比べて赤土は粒子が細かいため、貝類にとっては住みにくい場所となり、生体数の減少を招きました。
未来のために
現在は、未来と比較可能なデータとして、環境DNA情報が収集されています。環境DNAとは、土壌や水などに含まれる生物由来のDNAであり、微生物のDNAなども含めたあらゆるDNAを分析します。微生物は大きな生物より環境に影響されやすいため、環境の変化が読み取りやすく、開発工事の前後や台風の通過などの短期間での環境変化も捉えられます。また、海水の採取は簡単な作業であり、生物を目で見て数える方法よりも、はるかに多くの地点を調査できる利点もあります。沖縄本島1周200地点をめざす中で、すでに50地点でのデータ分析ができています。
沖縄の環境変化を理解するためには、歴史、経済、観光、国防などの独特な背景への理解も必要です。多角的な視点から生き物の変化を捉えることで、本当の原因が明らかになるのです。
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名桜大学 人間健康学部 健康情報学科 准教授 水山 克 先生
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