日本近海の生物多様性を明らかにした調査
日本近海は生物の宝庫
2010年、日本近海に生息する生物が3万3600種以上確認できたことが報道されました。容積では世界の海のわずか0.9%にすぎない海に、世界の海洋生物の14.6%の種が生息していることになります。現在、京都大学とJAMSTEC(海洋研究開発機構)が中心となり、世界の多くの国が参加して、沿岸域の生物を調査する「NaGISAプロジェクト(Natural Geography In Shore Areas)」が進んでいますが、参加国の中で日本近海は最も豊かな海を擁しています。
日本は気候帯が亜寒帯から亜熱帯まで広がりがあるということに加え、日本海溝などの深海があり、深い海から浅い海まで立体的にも広範囲であるため、生物が多様なのです。
海と海洋生物の問題とは
日本人は昔からこれら多様な海の恵みの多くを利用してきました。しかし、現在では海洋資源は減少傾向にあります。魚の数は、昔から増減を繰り返してきましたが、乱獲のため減る一方で、元に戻らなくなっている種もあるのです。
また、海は温暖化と酸性化(アルカリ度の低下)という二つの問題も抱えています。海水温については、「自然の気まぐれ」と言うべき年ごとの変化の方が大きく目立つのですが、平均的には少しずつ着実に上がってきています。また海の問題に関しては、温暖化よりもむしろ酸性化の方が深刻だという意見もあります。
世界に広がった調査方法
これらの問題に取り組むために、海洋の調査は重要です。「NaGISAプロジェクト」の調査方法は、採取したサンプルを一定の方法で保管し、それを分類学者が調べるという方法です。大がかりな機械などを使用しないので、発展途上国でもすぐに取り組めます。海洋の生物相を調べるという取り組みは、このプロジェクト名「NaGISA:なぎさ」からもわかるように日本が先頭に立って行っており、調査方法が簡便なため世界中に広がりました。
こうした調査で、日本や世界の海、そしてそこにすむ生物のことが、さらに明らかになっていくことでしょう。
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