畑の土と植物の関係は? 植物の成長や栄養吸収のメカニズムを探る

畑の土と植物の関係は? 植物の成長や栄養吸収のメカニズムを探る

土と植物の関係を探る

畑の土は窒素や微生物、有機物などを含んでいます。複雑な環境を築いているため、細かく調べなければ全体像を把握できません。例えば作物が成長する要因を探ろうと一部の成分だけに注目していたら、ほかの可能性を見逃してしまいます。土と作物の関係を明らかにしようと、1万以上の診断項目が網羅的に調査されています。

ダイズの成長を支える要因は?

これまで、ダイズの成長は栄養分(特に窒素)により促されていると考えられてきました。しかし、ダイズを栽培している畑の土を採取し、微生物の種類や量、窒素量などを分析した結果、ダイズの収穫量が多いときは土壌内に特定の微生物が多く存在していることがわかったのです。このように、土壌内の微生物や成分などを網羅的に計測した数値を使ってモデルを作成すれば、その年の収穫量、気候変動が起きたときの影響、土壌に追加すべき栄養や微生物などがわかるシミュレーションを構築できるかもしれません。作物を栽培すると二酸化炭素の量はどう変化するのかなど、環境への負荷も予測できると期待されています。

放射性物質を吸収しないダイズをめざして

また作物が、成長に不要な成分を吸収して問題になることもあります。特にダイズは土壌内の放射性セシウムを吸収しやすい作物で、福島県では原発事故後、一時的に栽培できなくなりました。植物は、各元素に対して「輸送体」という専用のトンネルを使って土壌内の成分を吸収しています。ダイズがセシウムを吸収するメカニズムを解明する研究では、ダイズは成長に不可欠なカリウムを吸収する輸送体を約60個持っており、そのなかの一部が不要なセシウムも通過させていることがわかりました。その輸送体はカリウムが欠乏したときにのみ機能します。カリウム不足で非常事態に陥ったダイズは、性質が似ているカリウムとセシウムの区別がつかなくなるのです。このことから、特定の輸送体の機能を停止させたダイズを生産する方法など、実用化に向けたさらなる研究が求められています。

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福島大学 食農学類  教授 二瓶 直登 先生

福島大学 食農学類 教授 二瓶 直登 先生

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農学

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メッセージ

農学は実学と呼ばれる分野で、自分が取り組んだ研究の成果を社会に還元することができます。やりがいがある学問だと思いますし、農家を助けることもできるので、ぜひ農学に関心を持ってほしいです。高校時代は受験勉強だけでなく、外に出ることも大切にしてください。農業に興味があるなら畑を観察したり土に触れたりして、「作物がたくさん実る畑とそうでない畑は何が違うのだろう」などの疑問を持つと、それが研究テーマにつながるでしょう。現場をよく見ることを意識して、勉強や遊びに励んでほしいです。

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「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。