講義No.11416 物理学

謎に満ちたブラックホールの姿を、目に見える状態で撮影する技術

謎に満ちたブラックホールの姿を、目に見える状態で撮影する技術

目に見えないはずのブラックホールが撮影できた

光さえも抜け出せないほど強大な重力を持つ「ブラックホール」は、アインシュタインの一般相対性理論によって存在が予言されました。周囲の明るいガスを背景として、光が出てこない部分が黒い影として見える「ブラックホールシャドウ」を撮影することができれば、その存在を示す強い証拠になります。しかし、見かけのサイズが小さいことから、その姿を確認することは困難でした。イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と呼ばれる国際プロジェクトは、以下のような観測装置を作り上げることで、2019年4月、ついにブラックホールシャドウの画像を撮影することに成功したのです。

「地球サイズ」の望遠鏡を仮想的に構築

地球上にある複数の電波望遠鏡を結合して仮想的に地球サイズの望遠鏡を作る、「超長基線電波干渉計(VLBI)」という観測技術が活用されました。望遠鏡がとらえるのは、ブラックホール周辺から放出される微弱な電磁波の中でも、ミリ波と呼ばれる電波です。そのため、望遠鏡はグリーンランドや南極、標高数千メートルの高地など、大気中の水蒸気の影響を受けにくい場所に設置されています。各局で取得したデータを干渉させ、最新の画像処理技術を駆使して、「月面に置いたミカンを地球から観測できる」くらいの解像度を実現したのです。現在は、私たちが住んでいる天の川銀河や、ほかの銀河にあるブラックホールを、さらに精細に撮影するための取り組みが進められています。

ブラックホールでエネルギー問題を解決?

ブラックホールは、宇宙で発生する高エネルギー現象の動力源の一つであると考えられています。研究が進み、ブラックホール周辺からエネルギーが発生する仕組みが解明されれば、核融合などよりも効率的なエネルギー生成技術の考案に繋がるかもしれません。また、観測した電磁波を画像化するための最新技術は医療分野で活用されていましたが、この技術をさらに発展させることで、天文学以外のさまざまな分野で活用できる可能性があります。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 創生学部  助教 小山 翔子 先生

新潟大学 創生学部 助教 小山 翔子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

電波天文学、宇宙物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

勉強以外にも興味を持っていることがあれば、まずは何でも取り組んでみて、面白いと思ったら納得できるまで掘り下げてみると良いでしょう。私は、受験勉強のかたわらで国立天文台の天体観望会などに積極的に参加し、そこでアルバイトをしていた大学院生から天文学を学ぶためには物理と数学が必要だと教えてもらったおかげで、物理を選択し、物理学科に進みました。自分が本当に取り組みたい課題を見つけることができれば、課題解決のために必要な学びをデザインすることができ、多少困難なことがあっても乗り越えることができます。

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新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。