謎に満ちたブラックホールの姿を、目に見える状態で撮影する技術
目に見えないはずのブラックホールが撮影できた
光さえも抜け出せないほど強大な重力を持つ「ブラックホール」は、アインシュタインの一般相対性理論によって存在が予言されました。周囲の明るいガスを背景として、光が出てこない部分が黒い影として見える「ブラックホールシャドウ」を撮影することができれば、その存在を示す強い証拠になります。しかし、見かけのサイズが小さいことから、その姿を確認することは困難でした。イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と呼ばれる国際プロジェクトは、以下のような観測装置を作り上げることで、2019年4月、ついにブラックホールシャドウの画像を撮影することに成功したのです。
「地球サイズ」の望遠鏡を仮想的に構築
地球上にある複数の電波望遠鏡を結合して仮想的に地球サイズの望遠鏡を作る、「超長基線電波干渉計(VLBI)」という観測技術が活用されました。望遠鏡がとらえるのは、ブラックホール周辺から放出される微弱な電磁波の中でも、ミリ波と呼ばれる電波です。そのため、望遠鏡はグリーンランドや南極、標高数千メートルの高地など、大気中の水蒸気の影響を受けにくい場所に設置されています。各局で取得したデータを干渉させ、最新の画像処理技術を駆使して、「月面に置いたミカンを地球から観測できる」くらいの解像度を実現したのです。現在は、私たちが住んでいる天の川銀河や、ほかの銀河にあるブラックホールを、さらに精細に撮影するための取り組みが進められています。
ブラックホールでエネルギー問題を解決?
ブラックホールは、宇宙で発生する高エネルギー現象の動力源の一つであると考えられています。研究が進み、ブラックホール周辺からエネルギーが発生する仕組みが解明されれば、核融合などよりも効率的なエネルギー生成技術の考案に繋がるかもしれません。また、観測した電磁波を画像化するための最新技術は医療分野で活用されていましたが、この技術をさらに発展させることで、天文学以外のさまざまな分野で活用できる可能性があります。
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新潟大学 創生学部 助教 小山 翔子 先生
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