補聴器はここまで進化した! 今ある聴力を生かして生活の質を向上
音が聞こえる仕組みって?
人間が聞き取れる音の周波数範囲は、20Hzから20000Hzまでと言われています。これらの音が私たちの耳の聴覚器官に入った後、電気信号となって神経に伝えられ、脳に到達して音として知覚されるのです。
聴覚器官は大きく2つの部分に分けられます。音を増幅する外側の「伝音器」(外耳・中耳)と、音を電気信号に変換して神経に伝える「感音器」(中耳より奥の器官)です。人は、伝音器で障がいが起こると「伝音性難聴」、感音器で起こると「感音性難聴」になります。伝音性難聴は医学的な治療によって改善しますが、感音性難聴にはあまり有効な治療法がありません。しかし、早期に補聴器や人工内耳を使えば、個人差はありますがかなり聞こえをサポートできます。
ニーズや聞こえの特徴を見極めて補聴器を適合
聴覚障がいのある人に対して、そのニーズや生活環境に合った補聴器を見つけて、調整と装用指導を行い、日常生活で使えるようにすることを「補聴器適合」と言い、言語聴覚士が担う仕事の一つです。同じ感音性難聴でも、人によって聞こえの特徴は違います。例えば、「音として聞くことができても言葉としては聞き取れない」「音が少し大きくなっただけでうるさく響いて聞こえる」などです。言語聴覚士は、聴覚検査などを通して対象者の聞こえの特徴を見極め、補聴器を選び、その人の聴力を生かせるように調整します。
コミュニケーションの改善でQOLも向上
1990年代にデジタル補聴器が登場し、補聴器は劇的な進化をとげました。現在では、人の声と雑音を分離する機能や音漏れ防止機能、周囲の音環境を分析して特定の方向から来る音だけを拾う機能など、さまざまな機能があります。補聴器の装用を助けるフィッティング技術も向上し、自分に合った補聴器を見つけやすくなりました。
失った聴力を100%戻すことはできませんが、音や言葉が聞こえるようになり、他者とのコミュニケーションが取れるようになると、人との付き合い方が変わり、笑顔も増えていきます。患者さんのQOL(生活の質)の向上にもつながっているのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻 教授 高卓 輝 先生
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