放射性医薬品での検査も担当~診療放射線技師の役割とは~
体の中から放射線を出す
診療放射線技師は、放射性医薬品を使用した「核医学検査」を行っています。X線検査が放射線を外側から当てるのとは逆に、核医学検査は投薬した放射性医薬品が体の内側から放射線を出します。
例えば、がん細胞が骨に転移していないかを調べるためには、骨を形成するのに必要なカルシウムに似た成分に放射線を出す元素をつけた薬を使います。がん細胞が転移した部分はカルシウムの代謝が活発であるため、体中の薬が転移部分に多く集まって放射線を出し、画像で確認できるのです。薬は1時間~数日程度で体の外に抜けてしまい、かつ放射線自体も自然に減っていくので、被ばく量が少なく1度の投薬で全身を細胞レベルで調べられるのが核医学検査のメリットです。
さまざまな病気の早期発見に
アルツハイマー型認知症の治療薬が承認される前から、検査用の放射性医薬品の開発が進んでいました。正常な人に比べて脳内の血流が低下するパターンがわかっているため、現在はこのような血流低下の程度を詳細に比較する解析技術が画像診断に用いられています。さらに、アルツハイマー型認知症のもととなる脳の老人斑「アミロイドβ」や、「タウ」という脳内物質の分布を画像化する放射性医薬品の開発も進められています。
安全安心な核医学検査と治療のために
核医学診療には一般的な核医学検査のほかにPET(ペット)検査や核医学治療があり、放射性医薬品の種類は多岐に渡ります。薬は放射線量を正確に測定して準備しますが、中には投与前に最終調製が必要なものがあります。薬の保管や調製の不備により薬と放射線を出す元素が外れてしまうと、薬が目的の場所に行き届きにくくなり、数値に誤差が出ることがあります。投薬前に元素外れがないかの確認試験やその原因を知ることが大切です。そのため、迅速に実施できる確認試験の方法や元素外れの原因を調べる研究がなされています。準備や投与時に不備がないように薬剤師や看護師、医師と連携し、安全面に細心の注意を払うことが重要な役割です。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 医療技術学部 診療放射線学科 講師 横塚 記代 先生
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