リハビリで運動機能が回復するのはなぜか?
リハビリ次第で復活する運動機能
私たちが身体を動かす時、脳からの指令が身体の各部位に伝わって筋肉を動かします。ケガや病気が原因で、脳の一部などに障害を負うと、それまで無意識に実行できていた身体の動きが、うまく実行できなくなる場合があります。ところが、リハビリのプログラムに従って、意識しながら身体を動かす訓練を続けると、次第に動きが自然になり、無意識のレベルでの動作も可能になっていきます。脳の損傷などの障害そのものが治ったわけではないのに、なぜなのでしょうか。
運動の制御を司る3つの学習回路
人間の脳には、身体の運動を制御する際に重要な3つの回路があります。大脳基底核、小脳、大脳皮質がそれぞれ重要な役割を担っており、運動だけでなく思考、判断、予測といった認知にも重要だとわかってきました。これらの回路は動物の脳にも共通して存在する仕組みであるため、マウスなどを使った実験で、運動学習の脳の仕組みを調べることができます。
ある実験では、3つのレバーを設定した順番通りに操作したら餌皿に餌が出てくる装置を用意し、健常なマウスと、遺伝子操作で脳の一部を機能低下させたマウスで、レバーの操作順を覚えるまでにどのくらい時間差があるか、どのような組み合わせで学習させるとより効率良く操作を覚えられるか、といった検証を行っています。
そうした実験から、脳に障害が生じて運動が阻害されても、適切なリハビリを行えば、その運動制御に関わる回路が脳の中で組み替わって再び自然に動かせるようになるという一連の仕組みが、具体的に明らかになってきました。
スマートフォンで脳の機能をチェック
身体の動作を回復させるためのリハビリに取り組む際、どのようなプログラムを組むのが最適かを判断するにはいくつかの方法があります。最近はスマートフォンの加速度センサーを活用した測定装置で、脳のどの部分の機能が低下しているのかを判断する手法が研究されています。この測定方法は、認知症を発症する兆しのある人を発見するのにも役立つと考えられています。
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金沢大学 医薬保健学域 保健学類 准教授 米田 貢 先生
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