従来のうつ病には当てはまらない? 「新型うつ」の特徴とは
「新型うつ」はメディア用語
1990年代後半から2000年代にかけて、気分の落ち込みを訴える一方で従来典型的と考えられてきたうつ病とは異なる特徴を示す人が増え、「新型うつ」としてメディアが取り上げるようになりました。しかし、新型うつという医学的な病名は存在しません。
一般的なうつ病は、気分が落ち込む、眠れない、食欲がないといった症状が続くのが特徴です。一方、新型うつには、過食や過眠のほか、好きなことをしているときは症状が軽くなるといった特徴があります。日本ではうつ病は真面目できちょうめん、仕事熱心な人が頑張りすぎて燃え尽きてしまった結果というイメージがあったため、これに当てはまらない人たちは「新型」と表現されました。
キーワードは「対人過敏」と「自己優先」
新型うつについての資料の分析や、精神科医や臨床心理士への聞き取りなどを経て、新型うつとされる人たちに共通する特徴を探ると、「対人過敏」と「自己優先」という傾向が浮かび上がってきました。対人過敏とは、他人にネガティブなことを言われるのを過度に気にして、軽い調子で言われても重く受け止め傷ついてしまう傾向です。自己優先は、他人への気遣いより、自分の状態を良くすることを優先させる傾向です。現在、これらの傾向の度合いを調べる尺度や、新型うつとされる人の症状の重さを測る方法の開発が進められています。
精神疾患流行のメカニズムを探る
近年、うつ病が広く知られるようになりました。精神疾患の歴史では、ある病気の存在が知れ渡ることによって、「自分もその病気かもしれない」と思う人が爆発的に増えるという現象が繰り返されてきました。19世紀後半のヒステリーや、明治から昭和時代にかけての神経衰弱などです。これには、無自覚な人が病気に気づくというメリットと、治療の必要がなくても病気を疑い、心や体の状態が悪くなる人が出てくるというデメリットがあります。新型うつの特徴や背景を探ることは、精神疾患の歴史に共通するメカニズムを解明することにもつながります。
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東北文化学園大学 現代社会学部 現代社会学科 講師 山川 樹 先生
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