見えないエンジン内の燃焼をイオンプローブで見る
エンジンの燃焼の様子
自動車に搭載されているエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合気を燃焼させ、その爆発的な膨張を動力に変換する機関です。この時に、どのような燃焼が起きているかは、実は詳しくわかっていません。エンジンは密閉されているため、燃焼の途中で中を見ることが難しいからです。そのため、これまでは強化ガラス製の実験用のエンジンを目視で観察するか、圧力センサで測定した燃焼圧力から燃焼の様子を推測するしかありませんでした。
イオンプローブでの測定
エンジンの燃焼を知るために、炎がわずかに電気を通す性質に着目した新たな方法があります。燃焼させる空間の内壁の数十か所に、電気に反応するイオンプローブというセンサを設置します。燃焼反応では燃料の成分の一部がイオン化するため、炎が触れるとイオンプローブはイオンが橋渡しした微弱な電気信号を感知します。それを増幅して測定することで、各箇所に炎が到達したタイミングを分析できます。しかし、エンジンの中にイオンプローブをくまなく取り付けることはできません。そこで、イオンプローブのない部分は、測定された数値から炎の流れを数学的に割り出して推定しています。この方法により、ハイスピードカメラの100倍以上の速さで燃焼の状態を明らかにできました。
環境負荷要因の低減をめざす
現在のエンジンは、燃焼の際に放出されるエネルギーをすべて動力として使えているわけではなく、何らかの形で損失しています。多くの先進国は2030年半ばまでにガソリンエンジン車の販売をやめる目標を出しています。しかし、既に作られたガソリン車は走り続けるので、環境負荷要因となるエネルギーの損失を少なくする努力は、引き続き必要です。現在は自動車メーカーと協働し、イオンプローブを使った燃焼計測技術で実際のエンジンを測定し始めています。この方法は、将来的に飛行機用のジェットエンジンの測定や、火力発電・焼却炉などのモニタリングにも応用できると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
広島工業大学 工学部 機械情報工学科 ※2025年設置構想中 教授 八房 智顯 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
機械工学、情報工学、エネルギー工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?