人と協調するロボットの開発をめざして-VRの実験プラットフォーム
ロボットが人と関わるときの難しさ
ここ数年、人間を支援するロボットの進歩は目覚ましいものがあります。実験上では、人間の言葉を理解し、物体を識別して指示されたものを持ってくる作業はおおむねできるようになってきています。しかし、実際に日常生活の場で人とコミュニケーションをとって作業できるロボットは、まだまだ開発途上にあります。
そのようなロボットの開発が難しいのは、人の話し方やジェスチャーがその場の環境(間取りやモノの置き場所)によって多様に変化するからです。また、画像や文章と違い、分析や機械学習のためのデータが十分に提供されていない問題もあります。さまざまな人々を集め、いろいろな状況を再現して、その中でロボットと人が実験的にやり取りをしてデータ収集や評価、分析をしていくことが理想ですが、それには膨大な手間と時間がかかります。
仮想空間で効率的に実験
そこで開発されたものが、メタバースのようなVR空間をクラウド上に置き、人と連動したアバターと仮想ロボットが会話したり協調作業したりできる実験プラットフォームです。人がどこからでも参加でき、モノの配置なども自由に変えられるので、さまざまな人や状況を対象とした実験ができるのです。
このプラットフォームを使ったロボット競技会(ロボカップ@ホームシミュレーション)も行われ、それを通して新しい課題やアイデアが見つかるなど、人と関わるロボットの研究の発展につながっています。
人に物事を伝える能力も必要
人間を支援するロボットは、人からの指示を理解するだけでなく、人に物事や手順を「上手く伝える」能力も必要です。例えば、ロボットの手が届かない棚にモノがあるとき、そのままでは作業が進められないので、人に「◯◯を取ってください」とロボットが適切に説明することが必要となります。そのような人間とのやり取りを対象とした研究も進められており、VRプラットフォームを活用して「人に上手く伝わっているか」を人のリアクションに基づいて評価する方法の議論も行われています。
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