コンクリートの建物を長持ちさせる方法
コンクリートが劣化する要因
日本のコンクリート造りの建物の寿命は35~50年と言われています。これは、コンクリート自体より、それ以外の材料や見た目の劣化によることが多いです。特に問題となるのがコンクリートの中にある鉄筋の劣化です。新築時のコンクリートはアルカリ性で鉄筋が錆(さ)びるのを防ぎますが、徐々に表面から中性に変化します。また、もともとコンクリートには目には見えない大きさの空隙が体積のおよそ10%程度あり、そこから水分や空気が侵入します。これによって、鉄筋が錆びてしまうのです。外から侵入する塩分も錆を進行させます。
コンクリートの劣化を防ぐには
鉄筋が錆びるのを防ぐには、水分や酸素の侵入を抑制することが重要です。それには、水を弾く含浸(がんしん)系の撥水(はっすい)材をコンクリートの表面に染み込ませる方法が有効です。この材料は普通の塗料と違いコンクリートの見た目を変えないため、多様なデザインの要求に対応できます。
このような表面処理だけでなく、コンクリート自体を強化する方法もあります。火力発電所から出るフライアッシュという粒子の小さい産業廃棄物をコンクリートに混ぜ、密度を高め外部からの劣化因子の侵入を防ぐものです。この方法は強度も上がるうえ、コストが安く、地球環境にも優しいという利点があります。
劣化をいち早く発見する診断技術と劣化の補修技術
コンクリートの不具合や劣化をいち早く発見して対策することが、長期利用には不可欠です。打撃診断や超音波検査、X線検査などが行われており、診断のための新たな技術開発も進んでいます。
コンクリートの劣化を発見した場合は、補修(コンクリートの治療)が必要です。例えば、劣化した部分を削り取り、補修材料で埋め戻すことがあります。補修材料には、紙おむつなどに使われる超吸水性ポリマーをコンクリートに入れ、同時に鉄筋防錆(ぼうせい)剤を混ぜたものを使用することがあります。ポリマーが吸水した水でコンクリートがシッカリと固まり、防錆剤で鉄筋の錆を防止するのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 工学部 建築学科 准教授 塚越 雅幸 先生
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