ヘビの体はなぜ長い? 遺伝子の働きから発生と進化を探る
どの動物も同じ形になる発生段階がある
人間の赤ちゃんがおなかの中で成長していく過程で、実はほかの動物とそっくり同じ形になる時期があります。この時期は「ファイロティピック段階」と呼ばれ、同じ「門」に属する動物の胎児は、発生生物学の専門家でも見分けがつかないほど、みな形がそっくりです。これは種のあいだで保存された同じ遺伝子がこの時期に働くためです。したがって人以外のモデル動物のファイロティピック段階を研究すれば、人間の発生の理解につながります。
ヘビの体が長いのはなぜ?
一方、ファイロティピック段階を過ぎると、種それぞれに特異的な形が作られていきます。頭から後ろ足までの背骨の数に着目すると、カエルが8個、スッポンが18個と少ないのに対し、ニワトリでは21個、ヘビに至っては220個もあります。
後ろ足は必ず「仙椎(せんつい)」という背骨の場所に形成されますが、発生中に「GDF11」という遺伝子が働いた場所に、仙椎と後ろ足が形成されることがわかりました。背骨は頭側から作られていきますが、カエルのように背骨の数が少ない動物では早い発生のタイミングでGDF11が働いて仙椎と後ろ足が作られ、反対にヘビなどではGDF11が遅い発生のタイミングで働くので背骨の数が多くなります。実際にニワトリの胎児でGDF11の働くタイミングを早めると、後ろ足が前側に作られます。
骨格パターンの多様性が生み出された仕組みに挑む
進化の過程で種ごとの背骨の数に違いが生じたメカニズムも、GDF11が働くタイミングの違いで説明できると考えられますが、なぜ種によって働くタイミングが違うのかはまだわかっていません。そこで、遺伝子の働きを制御する遺伝子発現調節領域の配列を異なる種のあいだで比較し、タイミングを制御しているDNAの領域を探す研究が進められています。
このような発生の仕組みの解明は、進化の過程で骨格パターンの多様性が生み出されたメカニズムをついにDNAの配列レベルの違いで理解できることにつながります。
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