物質の最小単位から宇宙を解き明かす! 素粒子ニュートリノの研究
ニュートリノという素粒子
物質を究極まで分解したときの最小単位を、素粒子といいます。陽子や中性子よりもさらに小さいクォークや電子などが素粒子であると考えられています。そのなかでも「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子は、電荷がないのでほかの物質と非常に反応しにくい、質量が非常に小さいなどの性質を持っています。宇宙全体を見ると、光子(光)の次に多く存在しているのがニュートリノなので、ニュートリノの研究は宇宙そのものの研究に関わっているのです。
物質が「残っている」のはなぜか?
宇宙は、ビッグバンによってエネルギーの塊からできたとされています。エネルギーから物質が生まれる時、物質とそのペアの反物質が同じ数だけ生まれる「対生成」という現象が起きます。また、物質と反物質はそれらが再び出合うと、また光となって消滅する「対消滅」という現象が起きます。つまり、ビッグバンによって同じ数だけ生成された物質と反物質は、時間が経てば消滅し、宇宙には光だけが残るはずなのです。しかし宇宙には物質だけが残り、反物質は残っていません。なぜ物質だけが残ったのかを説明するためには、物質と反物質の物理法則に違いがあること、つまり「対称性の破れ」が証明できればいいのです。ニュートリノ(物質)と反ニュートリノ(反物質)で物理法則に違いがあれば、それが宇宙に物質だけが残っていることを説明する材料になります。
対称性の破れの観測方法
実際に、ニュートリノと反ニュートリノの対称性の破れを観測するためには、茨城県にある加速器施設J-PARCでニュートリノと反ニュートリノビームをそれぞれ作り、それを295km離れた岐阜県にあるスーパーカミオカンデ検出器に飛ばして観測します。この時、「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象により、ニュートリノは、この295kmの距離を飛行中に別の種類のニュートリノに変化します。ニュートリノビームと反ニュートリノビームで、この変化の仕方が違えば、対称性が破れており、それが宇宙の成り立ちを解明する鍵となるのです。
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横浜国立大学 理工学部 数物・電子情報系学科 准教授 南野 彰宏 先生
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