「やればできる」は誰にでも当てはまるのか?
学校から疎外される子ども
貧富の格差が広がり続ける現在、社会の不平等は子どもの教育にも影響を及ぼしています。教育にお金がかけられない、あるいは保護者が十分な教育を受けていない家庭で育った子どもは、学校に入っても授業が理解できず、勉強がつらくなり、さらには早期に学校から離れてしまうケースもあります。学校から疎外された人たちは、学歴社会の中で評価されにくく、大人になっても困難な生活を強いられるという悪循環が生じます。教育社会学では、こうした「不平等の世代間再生産」に深く関わっている学校教育についての研究が行われています。
教師の意識が問題
学校から子どもが排除される要因のひとつに、教師が持つ「やればできる」という意識があるという指摘があります。個人の努力次第で学力が向上する=「やればできる」は、保護者が家庭で勉強をサポートするような環境にある子どもには当てはまります。しかしそうした環境がなく、小学校入学時点で学力が周囲から大きく遅れている子どもや、そもそもどう頑張ればいいのかわからない状況にある子どももいます。そのような子たちに「やればできる」という意識で指導することは、「できないのは本人の努力が足りないから」という評価を押し付けるリスクが生じるのです。もちろん、困難な状況にある子どもをフォローしている学校も多数ありますが、学力が偏重され、かつ一人の教師が多くの生徒を担当する現状では、さまざまな子どもたちを十分にケアできているとは言えません。
教育経験を平等に提供する
教育社会学は、アンケート調査やインタビュー、教育現場での観察といった手法を通して、学校に子どもを排除する側面があることを明らかにし、その仕組みや実態について掘り下げていきます。同時に、社会を広く見渡し、子どもの教育の機会を損なう要因についても考えます。そこで得られた学術的な知見は、すべての子どもに必要な教育経験を提供するためだけでなく、すべての人が平等に生きられる社会の実現にも役立てられるのです。
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大阪公立大学 現代システム科学域 教育福祉学類 教授 西田 芳正 先生
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