子どもの視点で絵本に親しもう!
絵と言葉で成り立つメディア
絵本は主として子どものために描かれます。だからこそ、子どもが楽しむためのいろいろな仕掛けが施されています。例えば大学生が想い出の絵本としてしばしば書名をあげる『ぐりとぐら』(中川李枝子・文、大村百合子・絵)は、長い間愛読されている作品のひとつです。
この絵本では表紙に2匹の野ネズミが描かれており、それぞれ「ぐり」は青、「ぐら」は赤と、タイトルの文字色とネズミたちの服の色を一致させることで、どちらが「ぐり」でどちらが「ぐら」かを見分けさせる工夫がなされています。さらに本文には紅葉やドングリの絵も登場し、文章説明はなくても季節を感じることさえできます。『ぐりとぐら』は絵と言葉がかけ算のように組み合わさった絵本の典型です。
空想力をかきたてる!
本文中には「とてもおおきな」の言葉で終わっているページもあり、文章も工夫されています。文が途中までしか書かれていないため、初めて読む子どもには次のページをめくる楽しみが、何度も読み直している子どもには予想された絵やストーリーが出現する安心感が得られるというわけです。
さらに、みんなが大好きなカステラを焼くシーンには動物たちが登場します。ページをめくるたびに動物の数が増えていき、子どもは「長い時間が経っているんだ」と感覚的に理解できるのです。
子どもは手ごわい読者!?
レオ・レオーニの『あおくんときいろちゃん』も絵本の傑作です。本文の最初の画面には真っ白な画面の中央に青色の丸がひとつだけ描かれていますが、そこに「あおくんです」という一文が組み合わさるだけで、青い丸はたちまち意思を持ったキャラクターに変身します。作者はイタリアやアメリカで活躍した広告デザイナーであり、各ページのレイアウトを工夫することで感情を表現するなど独創的な絵本を創りあげました。
子どもたちはつまらないと感じたら、すぐに放り投げてしまいます。しかし1度受け入れられれば、何世代にも読み継がれるロングセラーとなります。それも絵本や童話の大きな特徴なのです。
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先生情報 / 大学情報
愛知淑徳大学 創造表現学部 創造表現学科 創作表現専攻 教授 酒井 晶代 先生
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