機構に制約のあるロボットに物を運ばせる工夫
ロボットは重い物の移動が苦手?
ロボットは本体の重さに対して力が強くないため、実はあまり重い物を持つことができません。ロボットの力を強くするためには本体を大型にする必要がありますが、それでは活動できる範囲が限られてしまいます。
日本では少子高齢化が進んでおり、労働人口が減少していくと予測されています。そのためロボットにさまざまな物を持たせる研究や、組み立て作業などを行えるようにする研究が進められています。
動きの工夫で物を持つ
力の弱い小型ロボットで重い物を動かす方法のひとつが、「グラスプレス・マニピュレーション」です。持ち上げるのではなく押したり転がしたりして動かす方法で、床面に物の重さを支えてもらうことができます。しかし床面から摩擦力を受けるなど外からの影響を受けやすいので、確実な操作を行うためには物体にはたらく力やロボットが与える力を解析しなければなりません。
また、物の形に注目して簡単に持ち上げる方法としては「ケージング(囲い込み)」があります。ケージングはロボットで物を閉じ込めて、物が落ちないように支える手法です。リング状の物体であれば、輪の中にロボットの指を1本通すだけで対象物を持ち上げることができます。リング状の物体やバーベルのような両端がふさがっている物の移動にはケージングが向いていますし、重たい物体なら、物の下に手のひらを置いて支えたり、滑らせて移動させたりする方が簡単です。
動作を使い分けて組み立て作業を実現
組み立て作業をロボットで自動化するときは、状況や対象によって、物体へのアプローチ方法を使い分ける必要があります。例えば部品の形に合わせて囲い込みによる持ち方をしたり、落とさないように掴む力を調整したりと、持ち方を選びます。一方、ネジのような小さな部品の位置を合わせるときや、ばらばらのパーツを組み立てやすい場所に移動させるときはグラスプレス・マニピュレーションが使われます。私たちの暮らしを支えるロボットには、こうした細かな動きの制御の研究が欠かせないのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡工業大学 工学部 知能機械工学科 准教授 槇田 諭 先生
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