観光を研究し、地域に還元するツーリズム2.0時代
ツーリズム1.0からツーリズム2.0へ
旅行に関する情報を受動的かつ一方的に受ける状態を「ツーリズム1.0」と呼びます。現代はソーシャルメディア(SNS)の普及により、双方向のコミュニケーションで、消費者が自由に意見を交換したり、情報発信したりする「ツーリズム2.0」の時代へと移行したといえます。ユーザーの発信する観光情報が、他のユーザーや観光事業者にとって大事な情報源となるのです。2015年頃から、「スマートツーリズム」や「スマートデスティネーション」といった言葉が聞かれるようになりました。「スマート」は、スマートフォンなどの端末を介する仕組み、「デスティネーション」は観光地です。
観光地のSNSでの効果的な発信とは
観光情報の発信にはSNSを活用することが当たり前になっていますが、どう効果的に使うかが重要です。観光情報の発信に、日本では「ゆるキャラ」をよく使います。観光連盟などの公的機関の発信と、キャラクターを介した発信を、どのように使い分ければいいのかといった研究も行われています。被災した観光地がイメージを回復するために発信する場合、消費者からの発信よりもオフィシャルな観光窓口からの発信のほうが信頼されるといった調査結果もあります。
ビッグデータの解析による混雑の緩和
観光地のマネジメントを「デスティネーションマネジメント」といい、観光客を増やす、あるいは観光客が大量に押し寄せて地元住民が迷惑を被るオーバーツーリズムにならない仕組みなどが研究されています。観光客の移動パターンや公共交通の選択など、GPSのビッグデータを活用した分析も行われています。例えば、人が集中するスポットの混雑緩和には、複数の観光拠点が共同で割引チケットを販売することや、分散できて満足度の高い観光体験を開発するといった方法があります。こうした研究の拠点となりうる大学と、地域の人々が連携し、観光を一つのエコシステム(共存共栄していく仕組み)とする考え方が必要になっているのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 観光学部 観光経営コース 准教授 佐野 楓 先生
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