微生物が光に反応できるのはなぜ? 光受容タンパク質を分析する

微生物が光に反応できるのはなぜ? 光受容タンパク質を分析する

生物が光に反応する理由

人間などの生き物は目で光を感知します。一方、目を持たない微生物も、光との距離を認識したり、光合成に必要な色素を合成したりといった光応答を見せます。これは微生物が人間の目に含まれるタンパク質と類似の「光受容タンパク質」を持っているからです。
従来は微生物の中でも、特殊環境に生息する古細菌のみが持つと考えられてきた光受容タンパク質が、身近なバクテリアにもあることがわかってきました。しかも非常に多様性があることが判明してきました。これらが光の色を感知して機能を発現する仕組みを知るには、ひとつひとつの性質や構造の分析が求められているのです。

光を使った構造分析

光受容タンパク質が働く仕組みを明らかにするうえで主に使う方法が、光を使って、対象とする分子の振動から構造を読み解く分光法です。例えば、単結合の分子はゆっくりと、二重結合や三重結合の分子は速く振動します。分子の構造と振動は密接に関連していて、分子振動からその構造の手掛かりをつかむことができます。
光受容タンパク質の内部には、色素分子が入っていて、その色素の化学反応がタンパク質を動作させます。タンパク質は分子レベルの立体的な構造物で、その3次元的な構造を見ることが重要ですが、実はタンパク質内部の分子の立体構造を見ることは現在でも最難関の課題です。それを実現する一つの方法がラマン光学活性分光法です。この方法では、分子の振動を通して分子の三次元的な構造を解析することが可能です。ラマン光学活性分光法でしか知りえない新たな構造情報が得られてきました。

光受容タンパク質の応用に向けて

例えば温泉などの高温環境に住むバクテリアが持つ光受容タンパク質には頑丈なものが多く、分析や応用に向いています。研究がさらに進めば、バクテリアの光受容タンパク質を使って人間の脳の神経伝達信号を制御するなど、医療分野に応用できる可能性もあります。そのためには、ひとつひとつの構造を明らかにしていく研究の積み重ねが欠かせません。

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佐賀大学 理工学部 理工学科 化学部門 准教授 藤澤 知績 先生

佐賀大学 理工学部 理工学科 化学部門 准教授 藤澤 知績 先生

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物理化学、分子分光学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「こんなことを学びたい」とか「ひとの役に立つ何かをしたい」といった初心をもっていると思います。それを忘れないでほしいなと思います。目標を持って大学に来ても、時間がたつと周囲に流されて目標の実現を後回しにしたり、モチベーションが下がったりする人もいて、もったいないと感じています。
進学のきっかけとなった興味関心は、環境が変わっても自分の中に長く残るはずです。流されずに自分の意志を貫くことは難しいかもしれませんが、ぜひ大学では積極的に勉強に取り組んで、あなたの興味を追究してほしいと思います。

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