自分と他者との「異」に対して、人はどう向き合うのか?
他者との「異」について考える
ほかの人が話した内容やとった行動に対して抱く違和感の原因を文化の違いから解き明かし、他者と適切なコミュニケーションをとる力を養うのが「異文化コミュニケーション学」です。異文化といっても、国同士の文化の違いだけでなく、同じ国・民族やコミュニティ、グループ、家庭の中でも「異」はあります。そして、その「異」は、自分と他者との間にずれやギャップを感じた時に、明らかになります。
思いが伝わらない「異」の背景
「異」の例として、大学の寮のルームメイトである、日本人Aとアメリカ人Bとのやり取りを見てみましょう。Aは部屋でテスト勉強をしていますが、Bが友人たちと話す声が気になって集中できません。そこでAはBに「明日、試験があるんだ」と話しました。Aは言葉にせずに「だから静かにしてほしい」とにおわせたのですが、Bは「頑張ってね」と励まして談笑を続けます。
2人の間の「異」は、声のトーンや相手の表情、行間などの非言語情報である「コンテクスト(文脈)」に頼る度合いが高いか、低いかによって説明できます。日本人は文脈に頼る度合いが高く、アメリカ人は言語に頼る度合いが高いといわれます。言葉だけで見ると、Bの対応は理解できます。
「異」を受け止めて適切な行動をとるために
こうした「異」を人はどう体験し、どのように対応を発展させていくのかを6段階に整理したのが、アメリカのコミュニケーション学者、ミルトン・ベネットが提唱した「異文化感受性発達モデル」です。人の異文化への対応は、違いが見えないもやもやした状態から始まり、違い(境界)を認め、相手の立場や考えに思いをはせて、自分なりに考えてコミットする、というように発展していきます。「異」は簡単にはなくなりませんが、自分の受け止め方を変えて、うまく付き合うことはできます。身の回りの小さな「異」を解決していくことで、大きな「異」にも向き合えるようになるのです。
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東海大学 文学部 英語文化コミュニケーション学科 教授 山本 志都 先生
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