次元を超えて図形の本質を知る、トポロジーの奥深い世界
図形の本質に迫る学問
図形を研究する数学分野は幾何学ですが、幾何学はトポロジー(位相幾何学)や微分幾何学などの専門に分かれます。トポロジーとは何かを説明する際によく示される例に、ドーナッツとコーヒーカップの表面があります。見た目が大きく異なる2つの曲面ですが、薄いゴムのように自由に伸び縮みさせられる(ただし、千切ったり穴を空けたり2点をくっつけたりはできない)として、両者は同じ曲面であるとみなすのがトポロジーの考え方です。曲面の表面積や曲がり具合のような定量的な基準によらない、図形の定性的な本質に迫る学問がトポロジーなのです。
偉大なトポロジスト(位相幾何学者)たち
トポロジーの歴史は1700年代のオイラーにさかのぼり、1900年前後のポアンカレの研究により1つの分野として確立しました。ポアンカレは1904年に後にポアンカレ予想と呼ばれる3次元のトポロジーの難問を提示しました。その後、1982年にサーストンがポアンカレ予想を大きく一般化した幾何化予想を提示し、3次元のトポロジーを牽引していきました。そして、2002〜2003年にペレルマンが幾何化予想を証明することによりポアンカレ予想を約100年後に解き明かしたのです。ペレルマンが証明に用いたのは物理学由来の微分幾何学的な手法であり、3次元のトポロジーの研究とはほぼ無縁であったことが多くのトポロジストを驚かせました。
4次元のトポロジー
物理学由来の手法は、4次元のトポロジーでは1980年代からなじみのあるものでした。4次元というと非現実的に感じるかもしれませんが、数学の世界では何次元でも記述できるものなら理論的な存在として研究対象になっています(例えば、正多面体は、3次元には5種類存在しますが、4次元では6種類、5次元以上では3種類になります)。座標空間の微分構造は、4次元以外では1つだけですが、4次元には(非加算)無限個存在することが証明されたのも、4次元のトポロジーが突出して物理学由来の微分積分と深く関係しているからでしょう。
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大阪大学 理学部 数学科 講師 菊池 和徳 先生
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