航空レーザー測量で地面を調査 土砂災害の予測をめざす
大きな被害をもたらす土砂災害
近年、大地震の発生や気候変動による豪雨の増加により、土砂災害がいたるところで頻発しています。土砂災害では、山から崩れてきたり流れてきたりした土砂によって、人命や住宅が失われます。また、産業基盤や、道路、鉄道などのインフラが破壊されることで、地域の経済に長期間の打撃を与えることもあります。
航空レーザー測量で地面の亀裂を見る
こうした土砂災害の防止や軽減を目的とする「砂防学」では、水や土砂の動き方や、地面や地中の状態を調べて、より効果的な対策の仕方について研究します。この地面の調査に欠かせない技術が、20年ほど前から使われはじめた「航空レーザー測量」です。
この測量では、航空機からレーザービームを照射して、地面に当たって跳ね返ってくる時間を計測して距離を算出します。レーザービームは木々の間をすり抜けて地面に到達できること、また、高速で数cm程度の間隔で照射できることから、短時間に密度の高い測量ができます。土砂崩れが起こる斜面では、崩れる前に小さい亀裂がすでに入っていることがよくありますが、航空レーザー測量では、この亀裂の状態をはっきりと、広い範囲を対象にとらえることができるのです。
土砂災害が起きやすい場所を予測
現在は、大きな地震が起きた直後に航空レーザー測量が実施されることも一般的になりました。地震で揺れた地域を対象に、地震でできた亀裂を調べることで、次に雨が降った時に崩れやすい場所を探すのです。
崩壊そのものを防ぐことは難しくても、土砂災害が起きやすい場所をその地域の住民に知らせて、豪雨が予想される場合には避難を呼びかけるなどの対策をとることは可能です。地形や岩盤の状態、降った雨の量や地面に浸み込む速度など、さまざまな要因が関わるため、正確に土砂崩れの場所や時間を予測することは困難です。それでも少しでも正確な予測ができるように、日本の各地で地面の調査が行われています。
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